雇用保険の移転費はもらえる?紹介・転居の必要性・会社補助と申請準備
※本記事にはPRを含む場合があります。
こんにちは。『脱会社員』脱サラを応援し続けるブログ、運営者の『なかびー』です。
雇用保険の「移転費」は、紹介された仕事に就くため、またはハローワークの受講指示による訓練を受けるために転居するとき、一定の条件で移動や生活の立ち上げに必要な費用を支える制度です。引っ越しの領収書があれば、誰でもその全額を受け取れる仕組みではありません。
対象かどうかを確かめる順序は、紹介・受給資格、転居の必要性、費用の計算、会社の補助、申請、支給後の証明です。特に航空機の利用や会社からの貸付、家族が後から移る予定があるときは、支出する前に条件を整理すると、後から説明しにくくなるのを防げます。
この記事では、主に基本手当の受給手続きをしている方に向けて、転居前に集める資料と、転居後に提出する書類を紹介します。雇用保険を受けながら住所だけを変更する手続きとは分けて読み進めてください。転居費用の立替えが必要な場合も、支給決定前の見込額を入金済みのお金として扱わないことが大切です。
- 転居前:紹介日、雇用期間、通勤事情、会社の補助を書面で確かめる
- 転居時:本人と親族の移転日、実際の経路、費用を分けて残す
- 転居後:原則として移転の翌日から1か月以内に申請し、支給後の証明や変更の届出まで進める
制度の確認日は2026年10月10日(日本時間)です。厚生労働省の就職促進給付の案内と現行業務取扱要領をもとに説明します。本文の事例は架空であり、支給の可否や金額を保証するものではありません。実際の申請は、本人の受給資料と管轄ハローワークの案内に沿って行ってください。
紹介された仕事や訓練への転居か、対象条件を確認する

雇用保険の資格と、仕事につながった経路を分けて見る
移転費の出発点は、雇用保険の受給資格者等であることと、制度の対象となる紹介や指示を受けていることです。基本手当の受給資格者のほか、高年齢受給資格者、特例受給資格者、日雇受給資格者にも対象の範囲があります。ただし、給付を受けた後に対象となり得る期間などは区分によって異なるため、別の給付名を基本手当と同じ条件で読み替えないようにします。
仕事への紹介元は、ハローワーク等のほか、制度上の要件を満たす特定地方公共団体や職業紹介事業者も含まれます。「民間の紹介だから必ず対象外」とも、「転職サービスを利用したから必ず対象」とも決まりません。求人の閲覧、企業との連絡の代行、職業紹介のどれが行われたのかを確かめましょう。
たとえば、求人サイトで見つけた募集へ自分で応募し、その後に遠方の会社から内定を得た場合、採用された事実と、対象となる職業紹介を受けた事実は別です。窓口で求人番号を伝えれば過去の自主応募を紹介扱いに変更できる、という前提で手続きを進めないでください。
民間紹介の場合は、紹介元の名称、紹介日、求人の所在地、許可・届出受理番号などが確認材料になります。現行要領では、事業停止命令中の事業者や、業務改善命令に必要な措置を講じていない事業者などが対象の職業紹介事業者から除かれるため、紹介状の有無だけで受給を確約することもできません。
訓練への転居は、受講指示の内容が出発点になる
訓練のための転居では、ハローワークの所長が指示した公共職業訓練等を受けることが前提です。自分で申し込んだ講座に通いやすい場所へ引っ越すケースを、そのまま当てはめることはできません。訓練施設の名称、所在地、期間と、受講指示を受けた日をひとまとまりにします。
就職の場合に使う内定日や雇用期間と、訓練の場合の開始日や受講期間は、書類上も確認する場所が異なります。就職用の申請例を見ながら訓練先を「勤務先」として書くのではなく、自分の転居目的に合う欄を窓口で確かめてください。訓練そのものの受講指示や給付延長については、職業訓練と失業手当の延長の確認も参考になります。
待期、給付制限、紹介日の関係を日付で整理する
就職や受講を始める時点では、待期や、職業紹介の拒否等による一定の給付制限の期間が経過していることが必要です。ここで対象となる給付制限は、現行要領で範囲が定められています。自己都合退職に伴う基本手当の給付制限まで一括りにし、「制限中なら移転費も一律にもらえない」と判断しないでください。
受給資料に書かれた待期満了日、制限の理由と期間、就職日または訓練開始日を並べると、どの条件の確認が必要なのかが分かります。単に「まだ基本手当が振り込まれていない」と伝えるだけでは、待期中なのか、申請後の入金待ちなのかを区別できません。
基本手当の支給が終わった後の転居でも、支給終了前に職業紹介や受講指示を受けていれば、対象となる場合があります。仕事については、終了前に紹介を受け、終了後に就職が決定した場合も含めて、紹介日と決定日を確認します。移転日に基本手当が残っていないという一点で諦める必要はありません。
架空例では、9月中に紹介を受け、基本手当の支給終了後の10月に内定が決まり、11月に転居する人が考えられます。この場合に用意したいのは、紹介を受けた日を示す記録と、内定・就職・転居の日付です。「失業手当が終わっている」という説明だけで、紹介時点の情報を省かないようにしましょう。
雇用期間と、過去の移転費の取消しも確認する
就職のための移転では、雇用期間が1年未満の場合は支給対象になりません。雇用形態の名称だけで判断せず、労働条件通知書や雇用契約書で予定期間を確かめます。求人票に長期と書かれていても、採用時の契約がどうなっているかは別に見る必要があります。
毎年同じように離職と再雇用を繰り返すなど、循環的な雇用が慣行になっている人が従前と同様の状態で再雇用される場合にも、不支給となる取扱いがあります。「前職と同じ会社だから常に不可」という意味に広げず、実際にどのような雇用を繰り返しているかを説明することが必要です。
また、過去に移転費の支給が取り消され、返還を求められた金額の全額をまだ返していない場合は、新しい申請の不支給条件に当たります。これは今回の内定取消しや予定変更に対する届出とは別の確認事項です。該当する通知がある場合は、その内容と返還状況を最初に示してください。
対象確認の相談メモには、給付名、紹介元、求人番号、紹介日、内定日、就職日、雇用期間、待期満了日、転居予定日を記録します。訓練なら紹介・内定の欄を受講指示日と訓練期間に置き換えます。根拠は現行業務取扱要領の57501・57551です。
通勤時間と勤務条件から、住所を移す必要性を整理する

往復おおむね4時間は、通常の通勤方法で確かめる
対象となる紹介や指示があっても、転居の必要性の確認が残ります。現行要領では、通常の交通機関や交通の用具を利用した通勤・通所の往復所要時間が、おおむね4時間以上であることなどが示されています。県をまたぐかどうかや地図上の直線距離だけで決める基準ではありません。
調べるときは、旧住所から勤務先または訓練施設までの通常の経路を使います。駅間の乗車時間だけでなく、自宅から駅、乗換え、駅から職場といった移動のつながりを示すと、生活上の通勤時間を説明しやすくなります。混雑や待ち時間の見込みを勝手に大きく足すことはせず、時刻表などで確かめられる内容と分けます。
「検索アプリで片道2時間と出た」という結果を残す場合も、検索した曜日、出発・到着時刻、利用した経路を一緒に記録しましょう。平日の始業時刻に間に合う経路と、休日昼間の最速経路が異なることがあります。画面の数字だけでは、実際の勤務に使える交通機関なのか分かりません。
架空例として、朝の通勤が1時間55分、帰りが2時間15分となる勤務なら、合計時間に加えて、帰りの乗換えで待つ理由を示します。窓口では通常の経路として扱えるかも判断するため、本人が合計4時間を超える経路を選んだだけで承認が決まるわけではありません。
距離が短くても、始発・終電が勤務に合わない場合がある
往復おおむね4時間という時間の基準とは別に、交通機関の始発・終発等の便が悪く、通勤に著しい障害を与える場合も示されています。したがって、時間だけを見て4時間未満なら対象外と即断するのも適切ではありません。
たとえば、終業が23時30分なのに、自宅方面へ帰れる最終便が23時で終わる勤務を考えます。昼間なら片道40分でも、その勤務を終えてから利用できる帰路がなければ、日中の所要時間では問題を説明できません。終業時刻が分かる勤務表と、最終便が分かる時刻表を対にして整理します。
交替勤務では、昼勤だけでなく早朝・深夜の勤務日も分けます。一方で、まだ決まっていない残業を毎日の確定した勤務として書くのは避けてください。決定済みの勤務条件、会社から説明された見込み、自分が心配している可能性を区別すれば、必要な追加資料を確認しやすくなります。
自家用車の利用や送迎など、通常利用できる別の交通手段がある場合も、実態を隠さず説明します。自分の希望だけで特定の移動方法を除外したり、危険な運転や無理な深夜移動を前提にしたりせず、利用可能な手段と勤務条件を具体的に示して判断を受けましょう。
事業所の事情や会社の居住条件は、内容が分かる資料にする
事業所・訓練施設の特殊性や事業主の要求により移転を余儀なくされる場合も、必要性の判断に含まれます。会社から寮への入居を条件として提示されている、特定の地域で生活する必要があると説明されているなど、実際の条件を確認してください。
この場合は「会社が引っ越した方がよいと言った」という要約だけでなく、誰から、いつ、どのような条件を伝えられたのかが重要です。労働条件通知書に記載がなければ、採用担当者からの案内や、居住条件が分かる資料を用意できるか尋ねます。会社に制度の支給可否を証明してもらうのではなく、勤務上の事実を明らかにするためです。
本人が通勤を楽にしたい、新しい住まいの方が家賃が安い、家族の希望する地域へ移りたいという理由だけで、制度上の必要性が決まるわけではありません。生活上の希望もある場合は、勤務・訓練のために必要な事情と、本人が選択した条件を分けて説明しましょう。
通勤資料は「条件・経路・障害」を一組にする
次の表は窓口へ持参するメモの例です。添付が必須となる書類を一律に指定するものではありません。手元の資料をこの順に並べると、何を示せていて、どの部分が会社への確認待ちなのかを整理できます。
表は横にスクロールできます。実際の勤務日と利用できる交通機関を組み合わせて確認してください。
| 確認する条件 | 準備する情報 | 説明したい点 |
|---|---|---|
| 通常の通勤時間 | 旧住所、就業場所、経路、往復時間 | 勤務日に通常利用する方法か |
| 始発・終発の障害 | 始終業時刻、時刻表、乗換え | 間に合わない区間や帰れない時間帯 |
| 交替勤務 | 勤務区分ごとの時刻と日程 | 昼間だけの経路では説明できない事情 |
| 事業主の要求 | 入寮条件や居住条件の書面 | 本人希望と勤務上の条件の区別 |
| 訓練施設の事情 | 受講指示、施設所在地、授業時間 | その訓練を受けるための転居か |
相談後は、追加で求められた資料、回答を受けた日、担当窓口を残します。申請先と紹介を受けた窓口が異なる場合には、同じ勤務条件を伝えられるよう、元の求人票と相談メモをまとめておくと役立ちます。距離を測り直す前に、勤務時刻や就業場所が採用時に変わっていないかも見ておきましょう。
なお、遠方の面接へ出かけるための広域求職活動費と、住所を移す移転費では目的と要件が違います。面接旅費で使われる距離の数字を、移転費の必要性の判定に転用しないでください。移転費では、転居前の生活場所から仕事・訓練に通うことがどのように難しいのかを確かめます。
交通費・移転料・着後手当と、家族の移転を分ける

6費目を、誰の移動と何の費用なのかに分ける
移転費は、鉄道賃、船賃、航空賃、車賃、移転料、着後手当の6種類です。本人が払う引っ越し代の項目と、制度上の費目がそのまま一対一で対応するわけではありません。交通に関する費用、距離等により決まる移転料、移転後の着後手当を分けると、見積書の合計だけで判断せずに済みます。
交通費や移転料では、旧居住地から新居住地までの通常の経路が基本となります。引っ越し前の下見旅行、私的な寄り道、別の日の家族訪問などがあるときは、本来の移転行程と分けて残しましょう。支払った事実があることと、その支出が制度の計算に含まれることは別です。
鉄道賃には普通旅客運賃を基礎とする取扱いがあり、急行料金なども区間等の条件に沿って計算されます。船賃、車賃にもそれぞれの基準があります。上位の座席を選んだ、タクシーを使った、車で長い距離を走ったという事実だけから、その全額が出ると見込まないようにしてください。
表は横にスクロールできます。支払記録と制度上の計算を、別の欄で整理するための表です。
| 費目 | 整理する資料 | 注意する境界 |
|---|---|---|
| 鉄道賃・船賃・車賃 | 旧新居住地、経路、区間、利用者 | 購入額や走行距離だけで計算しない |
| 航空賃 | 事前の確認内容、便、領収書等 | 通常の経路・方法として事前に認められることが必要 |
| 移転料 | 計算基礎距離、親族を随伴するか | 業者の請求額や家族人数をそのまま掛けない |
| 着後手当 | 距離区分、親族随伴の有無 | 家賃・家具代等の領収書の合計ではない |
航空機を使うなら、購入前に認定条件を確かめる
航空賃は、航空機の利用が最も経済的な通常の経路・方法として、事前に認められる場合に限られます。移転区間だけでなく、移転にかかる旅費総額も踏まえた取扱いです。領収書さえ残せば、自分で選んだ便の運賃を後からすべて請求できる制度ではありません。
たとえば、鉄道なら乗継ぎと宿泊が必要になり、航空機なら日中に到着できる行程を考えている場合には、候補の経路と全体の予定を事前に示します。単に飛行機の方が早いと伝えるよりも、出発地、到着地、利用予定日、各交通手段のつながりが分かる情報が役立ちます。
事前に認められた場合も、実際に支払った旅客運賃を確認する領収書等が必要です。割引料金を利用できる場合には割引料金を使う取扱いがあり、旅客運賃に追加して払う特別席料金等は支給対象になりません。便を変更した場合は、変更後の支払額と、事前に示した経路との差を残してください。
移転料は人数ごとの定額ではなく、親族随伴の有無を見る
移転料は、制度上の計算基礎距離に応じた額を用います。対象となる親族を随伴する場合は、親族の人数の多寡にかかわらず規定の額となり、単独で移転する場合はその2分の1です。親族が3人なら規定額の3倍、という計算ではありません。
着後手当も、親族を随伴するか、単独か、距離区分はどうかによって額を確認します。実際に購入した家具や生活用品の代金を足し上げて、着後手当を計算する仕組みではありません。現在の金額は窓口が用いる原表で確かめ、古い体験談の受取額を自分の見込額として固定しないようにしましょう。
夫婦ともに受給資格があり、それぞれ対象となる紹介就職等のために移転し、ほかの親族も随伴する場合には、夫婦のどちらが親族を随伴する扱いになるかという調整があります。二人とも家族全員を随伴するものとして二重に計算せず、双方の受給資料と転居計画を一緒に示してください。
家族の交通費は、生計維持・同居・随伴を確かめる
親族の範囲は、本人の収入で生計を維持されている同居の親族が基本です。届出がなくても事実上婚姻関係と同様の事情にある人を含む取扱いもあり、戸籍が同じかどうかだけで決まるものではありません。反対に、親族関係があるという理由だけで、別の家計・別居の家族がすべて対象になるわけでもありません。
ここでいう収入を、失業手当だけに限定して考える必要はありません。実際にどのように生計を維持しているか、転居前にどこで一緒に生活しているか、転居後も同居するかを資料で示します。家族が一緒に新居まで旅行しただけで、その後は別の場所へ戻る場合は、移転料の親族随伴と同じには扱えません。
訓練受講のために、生計を維持していた同居の親族とやむを得ず別居し、その後も継続して生計を維持している場合には、別居だけを理由に除外しない取扱いがあります。現在の住所が別であることに加えて、別居した目的、期間、生計維持の継続を説明してください。
家族が後から移るときは、遅れる理由と解消日を残す
住宅事情、家事整理、親族の傷病、子どもの転校など、社会通念上やむを得ない理由で親族の移転が若干遅れる場合には、理由が解消した後、遅滞なく移転することなどを確認します。後で呼び寄せれば何か月後でも自動的に対象になる、という取扱いではありません。
たとえば、本人が先に赴任し、家族は転校手続きの都合で少し後に移る予定なら、本人の移転日、遅れる具体的な理由、その理由が解消する日、家族の実際の移転日を別々に残します。予定が延びたときは、最初の予定表を書き換えるだけでなく、何が変わったかも記録して相談しましょう。
最初は本人が寮へ入り、後から家族が別の住宅へ移る場合には、本人の最初の到着地と、家族の到着地が異なります。本人の最終的な新居住地や随伴の認定によって再計算が必要になるため、寮までの分と家族の新居までの分を自分で合算して請求しないでください。
費用の根拠は現行業務取扱要領の57601〜57605です。金額を見積もる前に、「誰が、どこからどこへ、何の理由で、いつ移るか」を確定させることが、家族分を正しく確認する近道になります。
会社の引越し補助や貸付を確認し、費用の重なりを整理する

会社負担は、制度上の移転費と比較する
就職先の事業主や訓練施設などから移転に必要な費用が支給されない場合、または支給される額が制度上の移転費の額に満たない場合が、移転費の確認対象になります。会社からお金が出ると一律に申請できないのではなく、その内容と金額を照合する必要があります。
会社での名称は、引っ越し補助、赴任費用、就職準備金、支度金などさまざまです。名称だけで対象から外すのではなく、何のために払われるお金かを確かめてください。給与と一緒に振り込まれる場合も、移転費用への支給であることが分かる明細や規程があると説明しやすくなります。
差額は、実際の引っ越し業者への支払額から会社補助を引くだけでは求められません。まず制度の基準で移転費を計算し、それと会社等の支給額を比べます。会社の補助が制度計算額以上なら、本人の実支出がそれを上回っていても、その超過分を当然に移転費で埋められるわけではありません。
架空の計算例として、窓口が制度上の移転費を18万円、会社負担を5万円と確認したなら、差額は13万円です。この18万円は標準額でも上限額でもありません。引っ越し業者の請求が18万円だったというだけでは、同じ13万円という結論にはできません。
見積りと実際の請求が違う場合は、支出の変化と会社支給額の変化を別々に見ます。会社の補助が定額なのか、領収書に基づく精算なのか、上限付きなのかでも最終的な支給額は変わり得ます。補助の規程と精算後の明細をつなげて確認できるようにしておきましょう。
まだ振り込まれていない補助も、予定として伝える
入社後の給与支給日に赴任費が振り込まれる会社もあります。申請時点で口座へ入っていないから「会社の支給なし」と記入すると、後から実績と合わなくなる可能性があります。支給が決まっている金額、精算待ちの金額、まだ未確定の金額を分けて窓口へ伝えてください。
たとえば、会社が鉄道運賃を直接購入し、本人には引っ越し業者代だけを精算する場合、本人の口座に入った額だけでは全体の負担が分かりません。誰がどの費用を払ったのかを一覧にし、会社の直接支払分も説明する必要があります。
会社の担当者へ聞くときは、「移転費をもらえる証明をください」ではなく、「転居に関して会社が負担する費用の種類、金額、支払時期を確認したい」と依頼します。制度の判断を会社に求めるのではなく、会社が把握している事実を正しく証明してもらうためです。
一定期間働くと返済不要になる貸付に注意する
会社から就職支度費の全部または一部を借り、一定期間在籍すれば返済しなくてよい契約では、貸与の時点で就職支度費が支給されたものとして一応処理する取扱いがあります。「借金なので補助はゼロ」と自己判断して除外しないでください。
架空例では、会社から転居費を借り、1年勤続すると返済が免除される契約が考えられます。この場合に持参したいのは、貸付額だけでなく、返済免除の条件、返済が必要になる場合、返済方法が記載された書面です。会社からの口頭説明だけで済ませず、条件を確認できる資料を残しましょう。
後日、貸与額を返済することになった場合には、当初から就職支度費が支給されなかったものとして改めて処理する取扱いがあります。ただし、本人が口座へ返済したら自動的に移転費の追加振込みがあるという意味ではありません。返済が必要になった理由、返済の書面や実績を、移転費の支給窓口へ伝えます。
この再処理と、紹介された仕事に就かなかったことによる返還は、確認する内容が違います。会社への返済があるときには、就職・転居が実際に行われたか、会社から何を請求されているかを一緒に示してください。貸付返済の事実だけから、移転費を受けられるとも返さなければならないとも決めないことが大切です。
会社の車を使う場合は、本人が負担した実費を示す
就職先等が所有する車などを利用して転居した場合、鉄道賃・船賃・航空賃・車賃は、本人や随伴する親族が払った費用に基づく実費相当額で算定する取扱いがあります。その額が通常の規定による計算額を超える場合には、規定による計算額が上限になります。
会社の車で移動したのに、利用していない鉄道の切符を購入したことにしたり、負担していない運賃を実費として書いたりしてはいけません。会社が負担した部分と本人が負担した部分を分け、何の支払いか分かる資料を残します。領収書がない費用がある場合は、その扱いを窓口で確かめてください。
費用照合メモには、会社制度の名称、対象費用、支給予定額、実績額、支払時期、貸付・返済免除条件、会社の確認先を書きます。会社側の「就職支度費」という呼び方と、雇用保険の別の給付である「常用就職支度手当」を混同せず、どこから何の目的で出るお金なのかを明確にしましょう。
会社費用との調整と貸付の取扱いは業務取扱要領57551、差額の取扱いは57606に示されています。採用時の説明と入社後の実績が変わったときにも、最初の書類を捨てず、変更の経緯をたどれる状態にしておくと安心です。
移転日からの期限と提出先を確かめ、紹介・親族の証明をそろえる

原則は移転の翌日から1か月以内、親族の後発移転は別に確認する
移転費支給申請書は、原則として移転の日の翌日から起算して1か月以内に、管轄のハローワークへ提出します。内定の翌日、会社補助の振込日、住民票を取得した日のいずれかを、自己判断で起算日に置き換えないようにしてください。
「1か月」をすべて30日と読み替えるのも避けます。月末をまたぐ予定や複数日にわたる移動がある場合は、自分の移転の日と申請期限がいつになるかを窓口で確認し、手帳に具体的な日付を書きましょう。最終日に書類の不足が分かると対応しにくいため、必要書類は転居前に聞いておきます。
やむを得ない理由による親族の後発移転として認められる場合、その親族については親族の移転の翌日から1か月という期限を確認します。本人分も家族が移るまで提出を待てばよい、という意味ではありません。本人の申請と親族分の扱いをあらかじめ分けて相談してください。
家族がまだ転居していないときには、予定日だけで完了したように記入せず、遅れる理由と予定を示します。実際の転居が済んだら、その日付と必要な証明をそろえます。家族の移転先が当初の住所から変わる場合も、管轄や計算への影響を含めて説明する必要があります。
1か月を過ぎても、その場で諦めず時効の扱いを確認する
厚生労働省は、雇用保険の給付について、申請期限を過ぎた場合でも時効完成までの期間内なら申請できると案内しています。移転費について、同資料が示す時効の起算日は移転の日の翌日です。原則の1か月期限と、原則2年の時効期間は役割が異なります。
したがって、「1か月を1日でも過ぎれば絶対に受け取れない」と決めつける必要はありません。一方で、2年の期間があるから手続きを後回しにしてよいわけでもありません。期間内でも紹介や必要性、費用等の要件を満たすかという審査は残り、時間がたつほど証明の準備が難しくなることがあります。
期限を過ぎた方は、移転日、遅れた経緯、手元にある紹介・雇用・費用の資料をまとめ、早めに窓口へ連絡してください。相談時には厚生労働省の申請期限と時効に関する案内をもとに、自分のケースで提出できる書類と期限を確認します。記事だけで時効完成日や支給可能性を確定しないでください。
申請書は両面を読み、本人・会社・紹介元の担当を分ける
移転費支給申請書は様式第30号で、表面には移転前後の住所・居所、就職先や訓練先、紹介元、就職予定日や訓練期間、移転開始予定日、旧新の最寄駅、移転する家族と運賃等の欄があります。裏面には、記入しない欄や親族の生計維持に関する注意があるため、表だけを見て記入を終えないようにします。
たとえば、公共職業訓練のための移転と、就職のための移転では記入する項目が違います。様式に欄があるからすべて埋めるのではなく、注意書きに沿って不要な欄を区別します。また、行政側が処理する※欄を、本人の見込計算で書き込まないでください。
本人が準備する受給資料には、受給資格者証等があり、マイナンバーカード利用者は窓口での認証の取扱いがあります。氏名や住所の変更がある場合は、受給資料と申請書の表示が食い違っていないかも確かめましょう。どの証明を添付するかは、本人の資格区分と手続方法に合わせて案内を受けます。
親族を随伴する場合は、生計を維持されている同居の親族であることを証明できる書類が必要です。市区町村長の証明書等が例示されていますが、手元の住民票1枚ですべての事情を証明できるとは限りません。転居前後の生活関係や、やむを得ず別居していた事情を伝えたうえで、必要書類を聞いてください。
特定地方公共団体や職業紹介事業者の紹介による就職では、紹介状の写しや「職業紹介証明書(移転費)」など、紹介の事実を証明できる書類を添えます。証明書には紹介日や就職予定日、紹介先、紹介元の情報があるため、採用証明だけで代用できると考えず、紹介元へ依頼するものを確認します。
表は横にスクロールできます。証明する人を取り違えないように、依頼先と準備状況を分けてください。
| 資料・情報 | 主な準備・確認先 | 確かめる内容 |
|---|---|---|
| 申請書・受給資料 | 本人とハローワーク | 両面の注意、資格区分、本人記入欄 |
| 紹介の証明 | 紹介元 | 紹介日、紹介先、対象となる紹介の事実 |
| 勤務・会社負担 | 就職先の担当部署 | 雇用期間、会社の支給額、貸付条件 |
| 親族の関係・生活 | 本人、市区町村等 | 同居、生計維持、後発移転の事情 |
| 航空運賃 | 本人、利用した事業者等 | 事前に認められた行程と現に支払った額 |
| 会社車両の利用 | 本人と会社 | 実際に本人・親族が負担した費用 |
転居で管轄が変わるときは、申請書の処理先を確かめる
移転費の申請後、支給決定前にほかのハローワーク管内へ住所・居所が変わった場合、申請書の移送などの手続きが関係します。一方、要領には一定の取扱いとして変更前の管轄で支給できる場合も示されているため、「転居したら必ず新窓口へ同じ申請を出し直す」と決めないようにします。
旧窓口へ提出済みなら、提出日と受付状況を新窓口にも伝え、どちらで処理するか、追加書類をどこへ送るかを確認します。二つの窓口に別々の申請として重ねて提出する前に、同じ移転に関する書類であることを共有するのが大切です。
受給中の住所変更の届出と、移転費の申請は別の手続きです。移転費を相談しただけで受給資料の住所や認定に関する引継ぎが完了したとは考えず、失業手当の受給中に引っ越すときの手続きも確認してください。両方の受付状況を記録すれば、何が済んでいるか整理できます。
郵送・代理提出は、添付資料と発信日を確認する
原則は本人が窓口へ出向いて提出しますが、本人が出向けない事情がある場合は、委任状を付けた代理人による提出や、郵送も認められています。郵送は発信日を申請日として消印で確認する取扱いです。送付先、必要部数、本人の事情を事前に伝え、発送の記録を残しておきましょう。
マイナンバーカード利用者が代理や郵送で提出するときは、カードによる認証は不要ですが、支給番号を特定するため、直近に交付された受給資格通知等を添える取扱いで、写しでも可能です。カード本体を封筒に入れて送る案内ではありません。資格資料を添えられない事情がある場合も、自分で省略せず窓口に相談してください。
支給後の移転証明と、就職・転居計画が変わった場合の届出を確認する

就職のための移転では、会社からの証明返送まで確認する
支給の手続きでは、移転費支給決定書と移転証明書が交付されます。就職のための移転では、移転後、決定書と証明書用紙を速やかに就職先へ提出し、会社が必要な事項を記載して、移転費を支給したハローワークへ返送する流れです。本人の口座への入金を見て、書類の処理もすべて終わったと思わないようにしましょう。
移転証明書では、転居後の住所、就職した事業所、雇入日、雇用形態・期間、会社が支払った就職支度費などを確認します。採用時の予定と実際の条件が違う場合は、その違いも会社の担当者に伝えます。本人が会社の証明欄を推測で埋めて、会社の確認なしに返送するものではありません。
会社に渡す際には、書類の宛先と、返送後に支給決定書が本人へ返される流れも確認してください。依頼した日、担当部署、会社から返送した日をメモすれば、手元に証明書がない理由を説明できます。会社へ預けただけで返送済みと判断しないことが大切です。
公共職業訓練等を受けるために移転する人は、要領上、移転証明書の提出は不要とされています。就職用の説明をそのまま当てはめて、訓練施設へ会社用の証明を求めないでください。ただし、訓練を受けなかった、転居しなかったなどの変更を知らせなくてよいという意味ではありません。
就職・受講・転居をしなかった場合は、確定した翌日から10日以内
移転費の支給を受けた後、紹介された仕事に就かなかった、指示された訓練を受けなかった、就職・受講はしても住所を移さなかった場合には、届出と返還が問題になります。届出はその事実が確定した日の翌日から起算して10日以内です。
この10日を、移転費の入金日から数えたり、迷い始めた日から数えたりするのは適切ではありません。内定辞退を決めて相手に連絡した日、受講しないことが確定した経緯、転居を取りやめた日など、何がいつ確定したかを説明できるようにします。起算日に迷う場合は、期限を自己判断で延ばさず早めに連絡してください。
架空例として、支給後に家庭の事情で転居を取りやめ、そのまま今の住所から働くことが決まった場合には、「就職はしたから変更なし」と考えず、転居しなかった事実を伝えます。仕事への就職と、認定された転居が実際に行われたことは、別々の確認事項です。
返還が必要になった場合も、自分で見つけた口座へ振り込むのではなく、支給窓口へ事実を届け出て、対象金額と返還方法の案内を受けてください。会社への貸付返済、移転費の返還、会社からの補助の精算を混ぜず、誰に何を返す手続きなのかを整理します。
就職後の解雇と、事実上の解雇に当たる採用取消しは分けて扱う
現行要領では、就職後に解雇されたときは移転費の返還を要しないとされています。また、採用が決定した後に、事業主のやむを得ない事情で採用が取り消され、事実上の解雇と認められる場合にも、返還不要の取扱いがあります。
そのため、「一日も働いていないから、どんな採用取消しでも全額返還」とするのは正確ではありません。一方で、本人が自ら辞退した場合や、理由がまだ確認できない場合まで一律に返還不要と広げることもできません。会社からの通知、採用決定の時期、取消理由、就職予定日を示して取扱いを確認します。
たとえば、採用決定後に会社側の事情で受入れができなくなった人は、口頭で「取り消しになった」と伝えるだけでなく、会社から届いた通知を保存してください。本人が希望して日程を変更したのか、会社が採用そのものを取り消したのかによって、確認する事実が変わります。
解雇等による返還不要の可能性があるときも、連絡をしなくてよいと自己判断しないでください。支給窓口へ事情を伝え、届出の方法と必要資料、返還要否の回答を残します。支給後の取扱いは現行業務取扱要領57652・57653で確認できます。
決定内容、証明、入金を別々に記録して終える
手続きの最後には、申請した費目、会社負担の額、本人と家族の転居の実績が、支給決定書と合っているかを確かめます。家族の後発移転や会社の精算が残っている場合は、その部分が未処理なのか、決定に含まれているのかを尋ねてください。
支給決定を受けたことと、会社から証明が返送されたことと、口座へ入金されたことは、それぞれ別の節目です。「申請から必ず何日で振り込まれる」と見込まず、書類の補正や事実確認が必要な場合も考えて、転居直後の支払いを組み立てましょう。
また、移転費の申請が、入社の申告や再就職手当の申請を兼ねるわけではありません。早期の就職に関する給付も確認したい方は、再就職手当の条件と申請の進め方と分けて、必要な手続きを整理してください。同じ就職に関係していても、判断する条件や提出する書類は異なります。
最後に残す記録は、紹介・指示の資料、転居理由の説明、経路と費用、会社負担、申請の控え、決定書、証明の返送状況です。変更があれば、その日付と窓口への連絡内容も加えます。受給可否を急いで一つの条件だけで決めず、自分の転居を時系列で説明できる状態にすることが、移転費の手続きを進めるうえで役立ちます。