フリーランスのNDA確認|秘密の範囲・共有先・終了後の扱いを整理する
※本記事にはPRを含む場合があります。
こんにちは。『脱会社員』脱サラを応援し続けるブログ、運営者の『なかびー』です。
フリーランスとして秘密保持契約書、いわゆるNDAを受け取ったら、最初に整理したいのは「どの情報を、誰が、何のために扱うのか」です。契約書の難しい言葉を一つずつ調べるだけでは、普段使っているクラウドへ保存してよいか、協力者へ資料を渡せるか、仕事が終わった後に何を残せるかまで決まりません。契約の該当箇所と実際の作業を並べ、分からないところを質問に変えると、相談すべき点が見えてきます。
この記事では、架空のフリーランス制作者が、架空の発注者から新サービスの紹介ページ制作を相談された場面を使います。発注者は未公開のサービス資料を渡し、制作者は見積りのために独自の制作手順の一部を説明する想定です。会社名、資料名、作業内容は説明用に作ったもので、筆者の実績や実在する契約の評価ではありません。
六つの節で、目的確認票、秘密情報台帳、共有先の対応表、取扱い手順票、終了時の管理票、署名前のレビュー表を作ります。これらは手元の契約を読み解くための整理例です。そのまま署名するための契約書ではなく、特定の条項の有効性や適法性、あなたが署名してよいかを判断するものでもありません。判断が必要な点は、実際の契約書と事情をそろえて弁護士などの専門家へ相談してください。
公式資料は2026年10月6日(日本時間)に確認しました。主に、公正取引委員会・中小企業庁・特許庁が2026年6月24日に公表した確定版の知財取引指針と附属ひな形、INPITの案内を参照しています。3月の意見募集段階の案や、以前のひな形とは区別しています。契約文言や実際の運用は案件ごとに異なるため、記事中の例を自分の契約へ自動的に当てはめないことが出発点です。
契約の目的と、自分が情報を渡す側か受け取る側かを確かめる

仕事の段階と、秘密保持の目的を一文にする
NDAは、情報の秘密を守り、約束した目的で扱うための契約です。受注する仕事の内容、報酬、納期、成果物の権利などが別の契約に書かれる場合もあります。書類の表題だけで役割を決めず、本文にどの約束があるかを確認しましょう。秘密を守る書類に署名することと、制作一式の発注条件が決まることを、作業上は別々に記録しておくと混乱を防げます。
架空例では、最初の段階は「紹介ページの制作を依頼できるか、必要な工数と進め方を検討するための情報交換」です。その後に正式発注され、取材や制作へ進むなら、扱う情報も作業も増えます。検討段階を目的とした文言で制作まで行えるか、別の業務委託契約で取扱いを定めるかは、相手に確認する項目です。目的欄を単に「業務のため」と書き写すだけでは、この切替点が見えません。
2026年6月24日公表の附属の秘密保持契約書ひな形(冒頭の解説・第1条・第5条)は、取引の可能性を検討する段階を想定した例です。情報の取扱いと、具体的な取引や権利の扱いを区別して読む手掛かりになります。ただし、ひな形の目的や各条文が、受け取った契約へ当然に組み込まれるわけではありません。
受け取る情報だけでなく、自分が見せる情報も数える
フリーランスは資料を受け取る側になりやすいものの、打合せで独自の制作工程、見積りの組み立て、未公開の提案などを示す場面があります。相手から提供される情報ばかりを確認していると、自分が開示する情報の保護を見落とします。各資料について「渡す人」「受け取る人」「何のために必要か」を一行にまとめると、情報の向きが片道なのか、両方向なのかが分かります。
このとき、発注担当者の名前と契約当事者の名前を混ぜないようにします。担当者は窓口であって、契約には別の会社名が書かれているかもしれません。制作者側も屋号を使っている場合、契約書の表記と連絡先の対応を確かめます。グループ会社、仲介会社、発注者の顧客が登場するなら、その人たちが契約の当事者なのか、情報の共有先なのかを整理してください。
知財取引指針の本編11ページは、互いに秘密情報を開示する場合に双方が秘密保持義務を負う考え方を示しています。ここから、片務型のNDAがすべて違法だと判断することはできません。情報の流れ、取引関係、条項の内容などを踏まえた個別の検討が必要です。こちらも情報を出す案件なら、まずその事実を相手へ伝え、どの部分で守られるかを確認するのが具体的な一歩です。
成果物1:目的・当事者・情報の流れる方向の確認票
※表は横にスクロールして確認できます。
| 確認する欄 | 架空案件での記入例 | 相手に確認する点 |
|---|---|---|
| 現在の段階 | 紹介ページ制作の可能性と工数を検討する段階 | 正式発注後の利用目的は、どの契約で定めるか |
| 契約当事者と窓口 | 発注者の契約上の名称、制作者の契約上の名称、双方の担当窓口 | 窓口担当者が承諾できる範囲と正式な回答方法 |
| 発注者から制作者へ | 未公開サービスの説明資料を見積りに使う | 検討のために必要なページだけ受け取れるか |
| 制作者から発注者へ | 未公開の制作手順の一部を提案の説明に使う | 制作者が開示する情報も秘密保持の対象に含まれるか |
| 今回は出さない情報 | 別の顧客の資料、過去案件の未公開原稿 | 説明が必要なら、秘密を含まない架空例に置き換えられるか |
確認票では、名称や住所などをこの記事の例から補うのではなく、受け取った契約と案件資料を見て記入します。会社名が似ている、担当者のメール署名と契約書の名義が違う、別の会社が支払うと説明された、といった場合は、推測で埋めず「確認中」にします。後で読み返したときに、確認済みの事実と仮置きした情報が同じ見た目にならないことが大切です。
開示する側としては、最初から手元の情報をすべて見せる必要があるかも考えます。例えば工数の相談に、顧客別の原価表の全体や、独自手順の細部まで必要とは限りません。説明する項目を絞る、一般化した説明資料を自分で用意する、詳しい検討が必要になってから追加する、と段階を分けられます。ただし、加工した資料にも秘密が残ることがあるため、加工しただけで自由に提供できると決めつけないでください。
逆に、受領する側から「必要な部分だけいただけますか」と伝えることも、作業を軽くします。大量の資料を受け取るほど、どこへ保存したか、誰に見せたか、いつ消すかの管理対象が増えます。見積りに不要な顧客名簿が添付されていたら、そのまま読み込んで仕事を進める前に、送付の意図や取扱いを確かめる。こうした入口の確認が、後の管理票を現実的な大きさに保ちます。
秘密情報の定義と、例外に当たる根拠を整理する

「秘密」の見分け方は契約の定義から読む
秘密情報の範囲は、資料に秘密と表示されたものに限る契約もあれば、表示がなくても一定の情報を含める契約もあります。メール添付、チャット、画面共有、口頭説明、試作品の貸与など、情報の渡し方もさまざまです。契約の定義欄を読み、「どの形式が対象か」「誰がどの方法で秘密を指定するか」「後から確認書面が必要か」を形式ごとに書き出しましょう。
架空案件では、発注者が画面共有で公開前の管理画面を見せ、後日、一部を抜き出した資料を送るとします。最初の説明と後日のファイルは、同じ内容を含んでいても記録が別です。会議の日、説明した人、対象の画面、後から届いたファイルを対応させておくと、何の情報について話しているのかが明確になります。会議の録音やスクリーンショットを残してよいかは別途確認し、証拠づくりのために無断で複製しないようにします。
2026年のひな形の第2条には、口頭などで開示した情報について、開示時の告知と開示後30日以内の書面通知を組み合わせる例があります。一方、末尾のオプションは対象や除外の書き方が異なります。30日は全NDAに共通する法定期限ではありません。自分の契約に同じ条件があるか、期限がいつ始まるかを原文で確認してください。
「表示がないから秘密ではない」「通知が来ていないから使える」と早合点するのは避けましょう。契約の別条項、業務委託契約、個人情報の取扱い、情報の性質など、ほかに確認すべき事情が残る場合があります。台帳は公開許可証ではありません。対象かどうか迷う資料は、判定を空欄のまま放置するより「定義を確認中・外部共有保留」と状態を書いた方が、日々の操作を間違えにくくなります。
例外は、当てはまると思った理由まで残す
公知の情報、以前から持っていた情報などが対象外として定められている場合でも、その言葉だけで結論は出せません。以前から保有していたと言うなら、いつ、どこで作成または取得したものかが問題になります。公表されたと言うなら、どの情報がどこまで公表されたのかを確かめます。サービス名が発表されても、内部の価格決定資料まで公表されたとは限りません。
架空の制作者が、以前から使っていた見積り用の手順表を持っているなら、元のファイル、作成時期が分かる記録、変更履歴を別に整理します。相手の資料を見た後で追記した部分がある場合は、前からあった部分と一緒にしない方が説明しやすくなります。ただし、記録があるだけで法的に例外が成立すると保証できるわけではありません。契約の要件と事実を照合するための材料として扱います。
第三者から得た情報も、情報源があるだけでは足りません。その第三者に提供する権限があったか、自分が秘密保持義務を負っていないか、といった確認が必要になります。「知人が送ってくれた」「別の取引先でも使っている」という説明を、適法な取得の確認に置き換えることはできません。出所を確かめられない資料を、例外欄へ入れて処理を終えるのは避けてください。
成果物2:情報の形式・秘密指定・例外根拠の台帳
※表は横にスクロールして確認できます。
| 情報と形式 | 秘密指定・受領の記録 | 例外に関する確認材料 |
|---|---|---|
| 未公開サービス資料/ファイル | ファイル名、版、受領日、送信者、秘密表示の位置 | 対象外とする根拠は現在なし。契約に沿って管理 |
| 管理画面の説明/画面共有 | 会議日、説明者、説明対象、事後通知の要否と受領状況 | 公表ページと内部画面を区別。公開済みとの推測はしない |
| 制作者の既存手順/自作資料 | 開示前の元ファイルと作成履歴、今回見せる範囲 | 以前から保有していたことを説明する記録の所在 |
| 公開されたサービス紹介/ウェブ | 公表された内容、確認日、公式ページの所在 | 公表された範囲のみ整理。未公開の補足を混ぜない |
| 第三者が送った参考資料/添付 | 情報源、取得の経緯、提供権限と守秘義務の確認状況 | 不明な間は例外と確定せず、利用・転送を保留 |
契約上の秘密情報と、不正競争防止法上の営業秘密も区別します。知財取引指針の本編7ページは、営業秘密について秘密管理性・有用性・非公知性の三要件を説明しています。NDAで定めた秘密情報の範囲が、この法律上の概念と必ず同じになるわけではありません。「営業秘密の要件を満たさないと思うので、契約上も自由に使える」と短絡しないことが重要です。
独自に作ったものの扱いを読むときも、条項の所在に注意します。2026年のひな形では、独自開発に関する秘密情報の除外はオプション側にあります。本文とオプションの文言を混ぜて、手元の契約にない除外があるものとして読むことはできません。「自分が以前から持っている型や、案件と独立して作った素材は、どの条項で扱われますか」と質問に変えると、確認したい範囲を示せます。
台帳はファイルを増やすたびに一から作り直す必要はありません。同じ資料の更新なら、旧版との関係と追加された情報を記録する方法もあります。ただし、古い版にだけ付いていた秘密表示が新しい版で消えているときや、公開用の資料が途中で混ざったときは、同じ扱いだと推測しないようにします。資料の名前が似ていても、取扱いの条件まで同一とは限らないからです。
利用目的と共有先を、普段の作業に対応させる

実際に情報が届く場所を、作業単位で並べる
「第三者に漏らさない」と読んだら、誰かへメールを転送する場面だけを思い浮かべがちです。実際には、外部の校正者へ原稿を渡す、オンラインの作業管理サービスに貼り付ける、打合せの自動文字起こしを使う、相談資料を専門家へ送るなど、情報が自分の外へ出る入口が複数あります。普段の作業を受領から納品まで順に並べ、各段階でどこへ何が送られるかを書いてみましょう。
ここで大事なのは、サービスや職業の名前だけで許可の有無を決めないことです。「クラウドだから問題ない」「専門家だから何でも渡せる」「外注先とNDAを結んだからよい」と一括りにせず、手元の契約がどの共有先を認めているかを確かめます。共有できる人でも、案件に不要な資料まで渡せるとは限りません。相手、目的、情報の範囲、方法の四つをセットで確認する方が実務に沿っています。
架空案件で、制作者が文章のチェックを外部の校正者へ頼みたいとします。必要なのは原稿の一部であり、発注者から受け取った全資料や顧客一覧ではないかもしれません。まず依頼に必要な情報を絞り、そのうえで共有の承諾が必要か、同等の守秘義務を負わせる条件があるか、校正後の返還や削除をどうするかを確認します。再委託そのものの可否が別の契約で定められている場合も、併せて確認する必要があります。
生成AIや自動処理は、入力前に条件を確認する
知財取引指針の本編12ページでは、AIへの入力が目的外の学習利用や第三者への開示に関わる問題になり得ることを挙げています。これは、すべてのAIサービスが同じ扱いになるという意味ではありません。利用する契約プラン、入力の保存、学習利用の条件、管理者の設定などは個別に確認し、NDA上の許容範囲と照合します。
質問を作るときは「AIを使ってもよいですか」だけで終わらせず、「この原稿のこの範囲を、このサービスのこの機能へ入力して、表記の確認に使いたい」と作業を具体化します。サービスの利用条件が不明な場合は、先にその不明点を解消する必要があります。入力した後に承諾を取りに行く運用では、確認前に情報を外へ出してしまいます。
学習に利用されない設定であっても、それだけでNDAの確認が完了するわけではありません。外部送信そのものをどう扱うか、履歴やログを誰が見られるか、保存や削除に制約があるかも別の論点です。生成AIを使わない作業方法を用意しておけば、確認が長引いたときに、秘密情報を入力しない範囲で進められる仕事が見つかることもあります。
成果物3:共有先・送る情報・確認要否の対応表
※表は横にスクロールして確認できます。
| 共有先と作業 | 送る情報を必要な範囲に絞る例 | 契約・運用で確認すること |
|---|---|---|
| 外部の校正者へ原稿確認を依頼 | 担当部分の原稿と必要な用語説明 | 再委託と秘密情報共有の承諾、守秘義務、再共有、終了時の処理 |
| クラウドへ案件資料を保管 | 案件用フォルダの必要資料 | 利用可能なサービス、アクセス権、共有リンク、保存先や削除の条件 |
| 生成AIで表記を点検 | 許可が得られた範囲の入力だけを候補にする | 利用目的、外部開示、学習利用、保存、対象プランと設定 |
| 会計の相談先へ請求資料を提示 | 相談に必要な取引内容を切り分ける | 契約上の開示先の定め、必要範囲、不要な技術資料の混入防止 |
| 弁護士へ契約の相談 | 相談に必要な契約書と関連事情 | 共有方法、契約上の条件、事前に確認すべき点を相談先と整理 |
同じ協力者へ以前の案件で資料を渡していたとしても、今回の許可があることにはなりません。今回の発注者、今回の情報、今回の作業について確認し、回答がどの範囲をカバーするかを残します。逆に、契約で認められた範囲が十分に明確なら、何でも都度確認する運用にして仕事を止める必要はありません。明確な範囲と、変更時に確認する範囲を分けるのが管理しやすい方法です。
共有先の対応表には、契約の該当箇所と承諾の記録の所在を添えておきます。チャットで回答を受けた場合に、それが契約で求める承諾の方法を満たすかは、その文言や状況によります。「担当者がよいと言った」だけで済ませず、必要な形式と回答できる人を確認しておくと、後から手続きをやり直す負担を減らせます。口頭の確認を記録するときも、確認していない内容を合意済みとして書かないようにしてください。
自分が他人から預かった秘密情報を、今回の発注者へ出すことにも注意が必要です。今回の相手とNDAを締結しても、元の情報の提供者から得た開示権限が広がるわけではありません。別の顧客の内部原稿を提案の参考として渡す、勤務先の非公開資料を説明に使う、といった行為を今回のNDAで正当化することはできません。出所ごとに自分が扱える範囲を確認する必要があります。
共有先が増えるときは、追加の人数だけでなく、情報の戻り方も確認しましょう。校正者の作業端末にファイルが残る、クラウドが履歴を持つ、文字起こしが自動で別のフォルダへ保存される、という違いがあります。依頼前に終了時の処理まで説明できれば、後から「どこに複製があるか分からない」という状態を避けやすくなります。対応表は開始時だけの書類にせず、使う機能や協力者が変わるたびに更新します。
保管・複製・実績掲載の運用を先に決める

いつもの保存操作を、案件の約束に合わせる
契約上の義務が読めたら、受け取った資料をどこへ置き、誰が開き、どの場面で複製するかを決めます。ここでは高価な仕組みを一律に導入する話ではなく、契約で求められる水準と、自分の環境で実行できる手順をそろえることが目的です。契約の条件を満たせるか分からない場合は、無理に「対応できます」と回答せず、現在の運用を具体的に伝えて調整点を確認します。
架空の制作者は、案件用フォルダを一つ作り、受領資料、作業中ファイル、納品候補を分けて保存するとします。最初に共有権限と自動同期の範囲を確認し、私用の写真や他案件のフォルダへ紛れ込まないようにします。ファイル名に秘密内容そのものを詳しく入れると、一覧画面や通知だけで情報が見えることもあります。命名規則も、作業しやすさと露出のしにくさの両方から考えます。
メール添付をダウンロードした瞬間に、同じ資料が受信箱、ダウンロードフォルダ、案件用フォルダの複数箇所へ残る場合があります。さらに画像編集ソフトが自動保存を作り、オンラインサービスが版履歴を持つこともあります。複製を完全にゼロにできると決めつけるより、普段使う機能がどこへ保存するかを把握し、契約で認められる範囲と照合する方が現実的です。
画面共有と持ち出しにも手順を作る
オンライン会議では、資料だけでなく、通知、ブラウザのタブ、最近使ったファイル名、別のチャットが映ることがあります。会議前に表示するアプリを絞り、通知の内容を確認し、意図した資料だけを共有する手順を用意しましょう。これらは事故を減らすための運用例であり、技術的な完全防止を保証するものではありません。共有の途中で別の資料へ切り替えるときも、同じ確認が必要です。
作業場所が自宅以外になるなら、周囲からのぞき見される画面、印刷物、オンライン会議の音声にも目を向けます。発注者が作業場所や端末を指定している場合は、その条件を先に確認します。便利だからという理由で私物の端末へ送る、家族の共有端末で開く、移動中に資料を広げる、といった操作を、普段の習慣のまま行わないようにします。
成果物4:案件開始時の秘密情報取扱い手順票
※表は横にスクロールして確認できます。
| 作業場面 | この案件で決めておく手順 | 確認記録に残す内容 |
|---|---|---|
| 受領 | 送信者と対象資料を確認し、指定の保管場所へ保存する | 受領日、資料の版、秘密指定、予定外の資料があったか |
| 保管 | 案件別に分け、必要な人だけがアクセスできる設定を確認する | フォルダの所在、権限を持つ人、共有リンクの範囲 |
| 編集・複製 | 必要な複製と自動保存の場所を把握し、許容範囲を照合する | 作業ファイル、履歴、ローカル保存、同期の対象 |
| 画面共有 | 表示する資料を準備し、通知や別案件の画面を確認する | 共有対象、録画や記録の可否、終了後に残るファイル |
| 納品 | 送信する版と宛先、共有権限を確認する | 納品物の版、送付先、確認した人、送付後の権限 |
| 実績掲載 | 公開候補の画像と説明文を特定して取扱いを確認する | 許可された素材、掲載先、時期、表記、変更時の再確認条件 |
手順票を細かく作りすぎて毎回守れなくなるなら、よく使う操作から整えます。例えば「外部へ送る前に宛先とファイルを確認する」「共有リンクの範囲を確認する」「案件の終了時に保存先一覧を見直す」など、実際に行う場面と結び付けると続けやすくなります。ただし、実行しやすい手順を選ぶことと、契約上の義務を省略することは別です。省略したい条件があるなら、事前の調整が必要です。
公開された成果物でも、実績掲載は対象を特定して確認する
紹介ページが一般公開されても、制作途中の提案、未採用案、管理画面、やり取りの内容まで公開されたわけではありません。自分が制作したことを話す行為も、契約の存在や取引の事実を秘密とする条項と関わる場合があります。ポートフォリオへ掲載したいなら、完成画面のどの部分か、会社名を出すか、担当範囲をどう書くか、掲載先と公開時期を具体化して確認します。
会社名を隠したり、画面をぼかしたりしても、サービスの特徴、数値、配色、時期、業種などから相手や内容が分かる場合があります。匿名化は公開の可否を自動で解決する方法ではありません。また、NDAとは別に著作権や第三者の素材の利用条件が関わることもあります。ここでは権利の帰属を判断せず、どの素材にどの確認が残るかを手順票へ記録します。
許可を得る資料は、完成予定の掲載画面に近い形にすると誤解が減ります。「実績にしてよいですか」という抽象的な質問より、候補画像と紹介文を示し、予定する掲載場所を伝える方が対象がはっきりします。許可された画像を後から差し替えたり、非公開の数値を足したり、別の広告へ転用したりすると、元の許可の範囲を超える可能性があります。許可の記録と掲載する版を対応させて保管しましょう。
掲載を見送る場合でも、実績を説明する手段がすべてなくなるとは限りません。秘密を使わずに新しく作った架空の制作例で、レイアウトや文章の組み立てを説明する方法もあります。その際は架空例と明記し、実際の受注実績として表示しないことが必要です。元の案件から固有の構成や内部情報を持ち出していないかを確認し、見せ方の工夫と情報の扱いを分けて考えます。
契約終了・返還・削除と、その後に残る義務を分ける

作業終了日と、契約や守秘の期限を別々に読む
納品した日、検収が終わった日、契約が終了する日、秘密保持義務が残る期限は、同じ日とは限りません。途中で取引の検討が終わった場合や、発注に至らなかった場合にも、受け取った情報の処理が必要になることがあります。終了時の管理票には、何をきっかけに義務が発生するかと、その後に何が続くかを別々に記入しましょう。
2026年のひな形の第6条・第9条は、返還・廃棄と契約終了後の存続を別の条項として置いています。存続期間の年数は空欄であり、契約後3年などの共通の法定期限を定めたものではありません。INPITの営業秘密管理のFAQも、有効期限は具体的な事情に合わせて決めると案内しています。実際の期限は、手元の契約の起算点、期間、更新の定めまで確認してください。
例えば契約終了日を基準にするのか、個々の情報を開示した日を基準にするのかで、管理方法が変わります。自動更新がある契約なら、最初に記入した終了予定日だけを見て処理を進めるのも危険です。相手から終了の連絡があった場合は、何の契約や作業を終了するという意味かを確認し、根拠となる連絡と契約の箇所を同じ管理票に残します。
返す原本と、残っている複製を洗い出す
返還対象は、受領したファイルや紙だけとは限りません。作業中に複製したデータ、抜粋を貼り付けたメモ、納品用に書き出した画像、クラウドの履歴、バックアップなどが関わります。契約の返還・削除条項がどの範囲を対象とするかを読んだうえで、開始時の保存先一覧と共有先の対応表を使い、実際に何がどこへ残っているかを確認します。
サンプルを借りていたなら、物の所在、数量、返送方法、返送先の確認が必要になります。データを返す場合も、相手が必要なファイルを受け取れたかと、自分側に残るコピーをどうするかは別の確認です。返送先が担当者の以前の住所のままになっていないか、共有リンクが期限切れになっていないかなど、最後の受渡しで新たな事故を起こさない手順を用意します。
バックアップの一部だけをすぐ消せない環境では、実際にできることとできないことを先に把握します。削除していないのに「全データ削除済み」と回答してはいけません。どの保存先に何が残り、いつどの方法で処理できるか、残る間のアクセス制限をどうするかを具体的に説明し、契約や相手の指示との調整が必要かを確認します。こちらの都合だけで例外を作ることも避けます。
成果物5:終了日・返還対象・保留確認・存続期限の管理票
※表は横にスクロールして確認できます。
| 管理する対象 | 確定させる事項 | 未確定のときに確認する点 |
|---|---|---|
| 契約と守秘の期間 | 開始、終了、更新、終了後に残る条項、起算点 | 仕事の終了と契約の終了は一致するか。どの情報にいつまで適用されるか |
| 受領した資料と原本 | 所在、返還か削除か、処理の指示、処理記録 | 相手が希望する方法と対象の版は何か |
| 作業中の複製や抜粋 | 編集ファイル、メモ、書き出し、履歴の所在 | どの複製を処理対象に含めるか |
| クラウドとバックアップ | 保存範囲、消去機能、処理時期、アクセス制限 | 即時の個別削除が難しい場合の扱いをどう合意するか |
| 法令上の保存や紛争に関わる資料 | 必要な資料と理由を専門家へ確認するための整理 | 削除義務との調整、残す範囲、保存方法をどう定めるか |
| 協力者へ共有した資料 | 共有先、対象、処理依頼、結果の確認 | 自分の端末だけでなく、承認された共有先の処理も追えるか |
税務や会計に関係する記録、紛争への対応に必要な資料などは、契約に削除と書いてあるからと機械的に消す前に、法令上の保存や証拠の扱いとの関係を確認する必要があります。この記事で保存年数や例外の可否を一律に決めることはできません。何を何の理由で残す必要があるかを整理し、税理士や弁護士など、論点に合う専門家へ相談してください。
保存が必要だと考える資料がある場合でも、案件の全資料を丸ごと残す結論には直結しません。必要な記録を切り分けられるか、閲覧する人を限定できるか、通常作業のフォルダから分離できるかなど、範囲と管理方法を検討します。相手との契約調整が必要な場合は、誰にいつ何を説明し、どのような回答があったかを残します。保存の理由を後から作るのではなく、削除前に確認しておくことが重要です。
処理記録は、実際に確かめたことだけを書きます。例えば「案件用フォルダの該当ファイルを削除し、共有リンクを解除した」と、「すべての保存領域から復元不能になった」は同じではありません。システムの仕様や確認できた範囲を超えた保証は避け、残る領域があるなら管理票に記載します。削除証明などを求められた場合も、求められる内容を満たせるかを確認してから回答します。
契約の期間が終わったときに、保管していた情報を自由に公開・再利用してよいと即断しないことも大切です。存続条項の有無だけでなく、別の契約や法律上の問題、第三者の権利などが残る場合があります。旧ひな形で終了後の条項が見当たらなかったとしても、それを理由に今回の資料の公開を勧めることはできません。終了時の確認は、処分の段取りと、その後の扱いを両方整理する作業です。
不明な条項と事故時の対応を、署名前の質問へまとめる

「分からない」を、相手が答えられる質問にする
ここまで作った五つの表を見直すと、確認できたことと、契約に書かれていないこと、書いてあるが運用できるか分からないことが分かれます。最後は、それぞれを契約の該当箇所と結び付けた三列のレビュー表にまとめます。「NDAが不安です」という相談より、条項と予定作業が並んでいる方が、相手の担当者や専門家に何を確認してほしいかが伝わります。
質問の順番は、情報の受渡しを始める前に決めたいことからにすると実用的です。誰の情報を守るか、どの利用目的か、誰へ共有するかが未確定なら、その点を先に確認します。作業を始めてから後で調整する予定にしてしまうと、回答前に資料を受け取り、共有し、加工することになりかねません。予定日が迫っている場合は、回答を待つ間に進められる範囲も相手と確かめます。
例えば「当社の許可がある場合は開示できる」と書かれていても、どの窓口へ、何を伝え、どの形式で承諾を受けるかが分からなければ、実際には使いにくい条項です。「外部校正者へ原稿の該当部分を共有したい場合、誰にどのように申請すればよいですか」と具体化します。相手が回答した内容を勝手に広げず、共有先や素材が変わるときの扱いも確認しておくと、次の作業につながります。
成果物6:条項・運用・確認質問のレビュー表
※表は横にスクロールして確認できます。
| 契約の該当箇所 | 架空案件で予定している運用 | 署名前にまとめる確認質問 |
|---|---|---|
| 目的と当事者の欄 | 見積り検討の後に紹介ページ制作へ進む可能性がある | 正式発注後に使う目的と契約の関係は、どの書面で確認できますか |
| 秘密情報の定義 | 会議で画面を見た後、説明資料を受領する | 口頭や画面共有の情報を特定する手順、事後通知の方法は何ですか |
| 第三者への共有 | 外部の校正者へ原稿の一部を渡す予定がある | 対象者、対象情報、承諾方法、守秘義務の条件を確認できますか |
| 保管・複製に関する欄 | 案件用クラウドで保存し、編集時に自動保存が生じる | 予定するサービスと複製の範囲は許容されますか。指定の方法はありますか |
| 公開や取引事実の扱い | 公開後に制作実績を紹介したい希望がある | 候補画像と紹介文、掲載先、公開時期を示したうえで確認できますか |
| 返還・削除と存続の欄 | 納品後に資料と作業ファイルを整理する | 対象、処理時期、バックアップ、保存が必要な記録、終了後の義務を確認できますか |
| 責任・事故対応・紛争の欄 | 漏えいの疑いを認識した場合に連絡する | 最初の連絡先、求められる報告、責任や紛争条項の対象範囲を確認できますか |
この表の左欄には、実際の契約の条番号、見出し、ページを入れます。この記事のひな形の条番号を、そのまま受け取った契約へ流用してはいけません。中央には自分が本当に行う作業を書き、まだ決めていない操作は予定と明記します。右欄は確認したい論点に絞り、相手が回答したら回答日、回答者、関連する書面の所在を別途記録します。相手に質問を送っただけでは、合意が成立したことにはなりません。
損害賠償や差止めの言葉は、範囲を確認して相談へつなぐ
契約に違反した場合の責任、差止め、紛争の解決方法が書かれていれば、その条項も読み飛ばさないようにします。誰のどの行為が対象なのか、第三者の行為まで責任を負う記載があるか、費用の範囲に何が含まれるかなどを拾います。ここで自己判断による損害額の計算や、訴訟の勝敗の予測をする必要はありません。気になる文言と想定している作業をセットで専門家に示すことが役立ちます。
2026年のひな形では、第7条が損害賠償、第8条が差止め、第10条が紛争の解決に関する条項です。これは参考例の所在を示したものです。あなたの契約の責任範囲、賠償上限や免責の有効性、管轄の意味、個別の紛争への適用を保証するものではありません。契約書の表題がNDAでも、ほかの重要な約束が含まれる可能性を意識して読みます。
相談時には、気になる一文だけを切り取らず、契約書全体と関連する業務委託契約、交渉の経緯、予定している情報の流れを用意します。条文同士の関係や別紙が判断に関わることがあるためです。まだ相手に伝えていない事情があれば、それも整理します。相談先へ資料を渡す方法や共有の条件も確認し、秘密情報を含む書類を無関係な場所へ広く掲載する形で相談しないようにしてください。
漏えいの疑いがあるときは、拡大防止と記録を両立する
もし誤った相手へファイルを送ったり、共有リンクの範囲を誤ったりした可能性に気付いたら、契約の報告先や社内外の担当窓口を確認し、把握した事実を速やかに整理します。確定していないことを断定せず、「いつ、何を、どの操作で、誰が閲覧できた可能性があるか」を分けて記録します。個人情報を含む場合などは、NDA以外の対応も関わるため、専門家や担当者への相談が必要になります。
拡大防止のため、不要な共有の停止やアクセス範囲の見直しが必要なこともありますが、経緯が分かるログやメールまで自己判断で消さないでください。操作の内容と時刻を記録し、証拠を保ちながらどの措置を取るかを関係者と確認します。相手へ連絡する前に、都合の悪いファイル名や履歴を変えて整えるような対応は、事実の把握を難しくします。
事故の連絡文は、「漏えいはありませんでした」と早く安心させることを優先せず、確認できた事実、未確認の範囲、実施した措置、次に確認する事項を分けます。契約で報告期限や方法が決まっているならその定めを確認し、不明なら窓口へ速やかに相談します。この記事で一律の報告時間を決めることはできません。普段から連絡先を手順票へ記入しておくと、判断が必要なときに探す時間を減らせます。
六つの表をつなげて、次の確認を一つ決める
読み終えたら、まず架空例の表を眺めるだけでなく、自分の案件の情報を一件、最初の確認票へ書き出してみてください。その情報を誰が渡し、どの定義に当たり、どこへ保存し、誰と共有し、終了時にどう扱うのかを追っていきます。途中で答えがなくなった箇所が、相手や専門家へ確認する具体的な質問になります。すべての欄を無理に埋めるより、不明点を見える状態にすることが先です。
署名の前に必要な確認が残っているなら、確認事項と回答が必要な理由を整理して伝えます。条件に合意した後も、使うサービス、共有先、公開したい素材、保存の方法が変われば、今回作った表を見直します。NDAを読んだ一日だけで終わらせず、実際の作業が約束した範囲に収まっているかを確認するための道具として使いましょう。
この記事で作った台帳や手順票は編集上の整理案です。専門家が個別契約を審査した結果ではありません。契約を締結するか、修正を求めるか、どの条件を受け入れるかは、具体的な内容と事情を踏まえた判断が必要です。表によって相談材料をそろえ、判断が必要な論点を曖昧なまま残さないことを目指してください。
参照した公式資料
- 公正取引委員会等:2026年6月24日の知財取引指針・契約書ひな形の公表(確定版の公表日と資料の版を確認)
- 知財取引指針(主に本編7〜12ページの情報管理、双方性、期間、目的と開示先)
- 附属資料・契約書ひな形(冒頭の秘密保持契約書とオプション。記事中の条文説明はこの例に限る)
- INPIT知財総合支援窓口:営業秘密管理のFAQ(情報整理、目的、終了後の守秘、有効期限)
- INPIT:知的財産契約の基礎知識(2022年更新の参考資料。2026年の確定版ひな形とは別の資料)