こんにちは。「脱会社員」脱サラを応援し続けるブログ、運営者の「なかびー」です。

「資料一式をお願いします」と言われて、まずスライド作成を予定表へ入れたものの、あとからPDF、進行メモ、修正の記録が出てくる。そんな抜けを点検するために、この記事ではWBSを使って、合意した一式を完成物のまとまりへ分解します。最初から日付を並べるのではなく、何がそろえば引き渡せるのかを先に見えるようにする練習です。

題材は成人向け勉強会の資料制作という架空案件です。原依頼、成果物の階層、活動一覧、誤りの診断、追加前後の比較を一つにつなげます。実在の受注・納品実績ではなく、工数も教材用の仮定です。答えを写すだけでなく、どの依頼からその箱が必要になったのかをたどってみてください。

「資料一式」を原依頼に戻して、数える対象を決める

合意範囲の原本とPDF、対象外の印刷と司会、未決の解答例を分けた原依頼確認

原依頼の合意範囲・対象外・未決を分ける。六つは主要成果物ファイル数で、管理記録を含む全送付数ではない。

原依頼から合意した範囲を拾う

WBSの最初の一行を「勉強会」とだけ書くと、会場や申込みまで含むように見えます。今回の一番上は「成人向け勉強会の資料制作一式」です。開催を成功させる仕事全体ではなく、依頼された資料と、それを作り引き渡すための記録を対象にします。この名前を先に固定すると、親切のつもりで司会準備を足す誤りも見つけやすくなります。読者は、次の原依頼を読み、完成時に残るものへ印を付けてください。

教材の原依頼13件。解答例は基準版では未決。
原依頼 内容 状態
S01 成人向け社内勉強会の配布資料制作。開催運営そのものは依頼しない。 合意範囲
S02 依頼者支給の承認済み原稿と図を用い、12枚のスライド編集原本を作る。 合意範囲
S03 同じ12枚の閲覧用PDFも渡す。 合意範囲
S04 参加者用の記入ワークシートをA4二ページで作り、編集原本を渡す。 合意範囲
S05 同じワークシートの印刷用PDFを渡す。 合意範囲
S06 進行担当者用に、説明の順番と各資料の参照先を記した二ページの進行メモを作る。実際の登壇は含めない。 合意範囲
S07 進行メモは編集原本と閲覧用PDFの両方が必要。 合意範囲
S08 使用を認められた支給素材だけを用いる。受取一覧と参照先一覧を制作側の記録として残す。 合意範囲
S09 初稿への指摘は依頼者が一つの指摘票へまとめる。合意した原稿内の訂正を一巡反映し、対応箇所が分かる記録を付ける。新しい内容の追加は変更相談。 合意範囲
S10 納品時は六つのファイルの版をそろえ、ファイル一覧と確認結果を渡す。 合意範囲
S11 制作中の範囲確認と最終受け渡しの記録も必要。 合意範囲
S12 印刷、郵送、会場手配、申込受付、当日の司会、翻訳、公開サイト掲載は今回の対象外。 対象外
S13 解答例も欲しい気がするが、内容はまだ決まっていない。 未決

編集原本とPDFを別々に数える

スライドに関する二つの依頼は、同じ内容を扱っていても同じ受け渡しではありません。編集原本は、後で文章や図を直せる形で渡すものです。閲覧用PDFは、その原本の採用版を別形式へ出力したものです。原本が保存されているだけではPDFの受け渡しを満たしません。逆にPDFだけを渡しても編集原本の約束は残ります。内容が同じだから一個と数えるのではなく、相手が受け取る形と用途の違いから二つを識別します。

ワークシートも同じ読み方ができます。ただし、PDFの用途には「印刷用」とあります。ここから実際の印刷まで引き受けたとは読めません。紙面を印刷に使える形式で渡す約束と、印刷機を動かして部数を用意する約束は別です。原依頼の対象外には印刷が明記されているため、PDFの完成条件へ「印刷して発送済み」を紛れ込ませると、最初の範囲を変えてしまいます。用途を読むことと、作業を想像して追加することを分けます。

進行メモは、さらに読み落としやすい箇所です。説明順と参照先を記すという依頼だけを見て、短い箇条書きをメールへ書けばよいと思うかもしれません。しかし次の依頼では編集原本と閲覧用PDFの両方が必要とされています。内容の約束と形式の約束が別の行に分かれているのです。原文一行を一つの成果物へ機械的に置き換える方法では、この結び付きが見えません。隣接する文を合わせ、何を、どの形で渡すかを確かめます。

六つという数は、スライド、ワークシート、進行メモについて、編集原本とPDFをそれぞれ数えた主要成果物ファイル数です。検査記録や納品一覧、支給素材の台帳を含む全送付ファイル数ではありません。「六つそろったので全部終わり」と判定すると、原依頼が別に求めていた管理記録を落とします。ファイル数は確認の補助になりますが、依頼の全文を置き換えるものではないことを、この段階で押さえておきます。

管理記録と確認項目を拾い、未決を分ける

支給素材の依頼には、使ってよい図だけを使うことと、使用先を追えるようにすることが含まれています。受取一覧があっても、どのページへ使ったのか分からなければ後半が残ります。逆に使用先一覧だけがあっても、その素材が使用可能だったかを確かめられません。ここでは二つを確認項目として分け、一つの素材台帳にまとめて管理します。確認する約束の数と、作るファイルや箱の数を一致させる必要はありません。

指摘への対応も二つの成果を生みます。一つは誤字や参照を直した原本、もう一つは何をどう扱ったかを追える横断記録です。スライドを直しただけで指摘票の状態が更新されなければ、依頼者には対応済みか分からない項目が残ります。しかし、台帳へ「対応済み」と書くだけで原本が直るわけでもありません。文字を修正する仕事と、修正先を記録する仕事を別のものとして拾うことが、後の二重計上の防止につながります。

原依頼を読み解いた16確認項目。AはWBSノードでも活動でもない。
確認項目 確認する内容 所属WP
A01 範囲・未決・対象外を含む確認記録 1.1.1
A02 受け渡しと受領状況の記録 1.1.2
A03 使用可能な支給素材の一覧 1.2.1
A04 素材と使用箇所の対応 1.2.1
A05 12枚のスライド編集原本 1.3.1
A06 スライド内の一巡訂正 1.3.1
A07 12ページのスライドPDF 1.3.2
A08 二ページのワークシート編集原本 1.4.1
A09 ワークシート内の一巡訂正 1.4.1
A10 二ページのワークシートPDF 1.4.2
A11 二ページの進行メモ編集原本 1.5.1
A12 進行メモ内の一巡訂正 1.5.1
A13 二ページの進行メモPDF 1.5.2
A14 指摘と対応の横断記録 1.6.1
A15 六ファイルの納品検査記録 1.6.2
A16 六ファイルの納品一覧 1.6.3

表の確認項目は、原文を読み解くための印です。新しい成果物名でも、着手順でもありません。例えばスライド編集原本には、十二枚という形と合意内訂正の反映という二つの確認が入ります。二つあるから原本を二個作るのではなく、一つの原本が両方を満たすと読んでください。同様に、素材一覧と使用箇所の対応は、一つの台帳の中に二種類の列として持たせられます。

未決の解答例を、見込みで確定範囲へ入れないことも大切です。「欲しい気がする」という原文は消さず、未決として残します。あとで追加が認められた場合、何が変わったかを説明する入口になるからです。対象外も空欄へ追いやらず記録します。完成物の表には載らない内容でも、原依頼と照合するときには、抜けではなく意図的に含めなかったものとして区別できる必要があります。

ここまでの小演習は、主要六ファイルを丸で囲み、管理記録を別の色で印し、対象外と未決へそれぞれラベルを付けることです。解答例に丸が付いたら、採用の根拠となる依頼行を探してください。基準版にはありません。このように、数を先にそろえるのではなく、含める理由と含めない理由を原文へ戻して説明できたところから、階層を作り始めます。

完成物の親子へ分け、共有作業を一度だけ置く

スライド一式の下に編集原本と閲覧PDFを並べ、共有台帳を一か所へ置くWBSの抜粋

WBSの一部を抜粋。親は二つの子の範囲をまとめるもので、追加の成果物ではない。

工程ではなく完成物の親子で分ける

今回のWBSでは、一式の下へ六つの親を置き、その下を十二のワークパッケージへ分けます。ワークパッケージは、ここで範囲と完了を管理する最下層のまとまりです。用語が難しければ、まず「出来上がったと判定する箱」と考えてください。親の箱には子の範囲がすべて収まり、同じ範囲が別の箱にも重なって入らないようにします。見栄えのよい樹形図を作ることより、原依頼に置き忘れがないことを優先します。

1 成人向け勉強会の資料制作一式

  • 1.1 管理記録
    • 1.1.1 範囲確認記録
    • 1.1.2 受け渡し記録
  • 1.2 素材・根拠記録
    • 1.2.1 支給素材台帳
  • 1.3 スライド一式
    • 1.3.1 スライド編集原本
    • 1.3.2 スライド閲覧PDF
  • 1.4 ワークシート一式
    • 1.4.1 ワークシート編集原本
    • 1.4.2 ワークシート印刷PDF
  • 1.5 進行メモ一式
    • 1.5.1 進行メモ編集原本
    • 1.5.2 進行メモ閲覧PDF
  • 1.6 横断確認・納品資料
    • 1.6.1 指摘・対応台帳
    • 1.6.2 納品検査記録
    • 1.6.3 納品ファイル一覧

最上位の下に「準備」「制作」「確認」という三つの箱だけを置いた案と比べてみましょう。この案にも仕事は入りそうですが、準備の箱に素材台帳を置き、制作の箱にスライド原本を置き、確認の箱に訂正済みスライドを置くと、同じ原本の範囲が工程をまたいで分散します。どこまでが一つの完成物なのかを別途説明しなければなりません。今回の解答では原本を一つの箱として持ち、その箱の中に初稿作成と訂正の活動を対応させます。

スライド一式という親は、編集原本と閲覧PDFをまとめるための名前です。親自身が、原本とPDFとは別の三つ目のファイルになるわけではありません。親の説明には、二つを合わせた範囲を書きます。もし親の完了条件にだけ「依頼者の指摘を反映」と書き、どちらの子にもその責任を置かないと、原本に反映するのかPDFだけ直すのかが曖昧になります。具体的な訂正は原本側に置き、PDFは採用原本との一致で確認する形に整理します。

ワークシート一式と進行メモ一式にも同じ考え方を適用しますが、完成条件まで共通文に置き換えません。ワークシートは記入欄の内容、進行メモは説明順と他資料への参照が重要です。親の構造が似ていても、どこを見れば完成と言えるかは違います。テンプレートで同じ二つの子を作った後に、各資料ならではの確認内容を残すことが、形式だけ整ったWBSを避ける方法です。

共有する台帳は一か所に置く

素材台帳を、スライド、ワークシート、進行メモそれぞれの下へ複製しない理由も考えてください。同じ支給図が二種類の資料に使われる場合、使用先は複数でも、使用可否を管理する台帳自体は一つにできます。資料ごとに同じ台帳を作ると、後で使用可否の修正があったとき、どれが最新か分かりにくくなります。今回の箱は素材・根拠記録の下へ一度だけ置き、使用先の列で資料との関係を表します。

これは「共有する仕事は見積らない」という意味ではありません。共通の台帳を整える仕事は確かにあるので、一か所で引き受けます。スライドへ図を配置する実制作と、台帳で使用先を照合する仕事は目的が異なるため、両方残ります。削るべきなのは別の成果を生む作業ではなく、同じ台帳整備を各枝へ重ねた部分です。名前が似ているだけで統合せず、何が出来上がるのかを比較してから判断します。

横断確認・納品資料の親には、指摘・対応台帳、納品検査記録、納品ファイル一覧を置きます。指摘台帳は直すべき箇所と対応状態の記録、検査記録は最終ファイルを照合した結果、一覧は何を渡すかの案内です。どれも表形式にできるから一緒、とは扱いません。一つのブックに三つのシートを入れる実装も可能ですが、確認目的の境界は残します。保存先が一つかどうかと、管理する範囲の区切りは別の判断です。

担当者の名前を親にした案にも注意します。「制作担当の仕事」「依頼者の仕事」と分けると、担当変更のたびに成果物の位置まで動きやすくなります。今回の進行メモは、制作担当が書き、依頼者が内容を確認しますが、二人の箱へ同じメモを置く必要はありません。成果物の所属は一つにして、確認役を辞書の別欄へ書けば、誰が関与するかと何を完成させるかを混同せずに済みます。

原依頼と階層を双方向に照合する

六つの親は、この教材の唯一の正解ではありません。例えば管理記録と横断確認を大きな一つの親へまとめる案も、境界と網羅を保てれば考えられます。一方、親を減らした結果、受け渡し記録が納品一覧へ吸収されて完了条件が消えるなら、名前を簡潔にしただけで範囲を失っています。別案の良否は、元の十六確認項目がどこへ入ったかを説明できるかで比べます。

照合は二方向で行います。原依頼から階層をたどるときは、約束がどこかへ収まっているかを見ます。階層から原依頼へ戻るときは、その箱を設けた根拠があるかを見ます。前者だけでは余計な印刷発送を見逃し、後者だけでは消えたPDFを見逃します。各確認項目の所属を一つにする確認も加えると、抜けと重なりを別々に点検できます。項目数が合ったという結果だけで、意味まで合ったことにはしません。

読者が自分の案を直すときは、最初に親の数を解答へ合わせる必要はありません。スライドの原本とPDFが区別されているか、共有台帳が複製されていないか、内部記録が落ちていないかを先に見ます。最後に箱の名前を読み、完成物のまとまりを表しているかを確認します。この順番なら、図の配置変更に時間を使いすぎず、依頼との対応を中心に推敲できます。

ワークパッケージ辞書で、完了条件と境界を固定する

スライド閲覧PDFの完了条件として形式・十二ページ・採用原本との一致を示す辞書

PDFが存在するだけでなく、採用原本の版とページ数を確認する。

辞書へ完了条件と隣の範囲を書く

階層に「スライド編集原本」と書けても、それだけでは初稿で終わりなのか、訂正後まで含むのか分かりません。そこで各ワークパッケージに、元の依頼、確認項目、完了条件、確認役、隣との境界を付けます。これが本演習の辞書です。原依頼をもう一度全文コピーするためではなく、箱の短い名前では表せなかった境界を補うために作ります。次の表は、基準版の十二の箱を省略せず載せたものです。

基準版の全12ワークパッケージ辞書。確認役の記載は確認実施済みという意味ではない。
WP・名称 元依頼/確認項目 完了条件 確認役/境界
1.1.1 範囲確認記録 S01・S11 / A01 範囲、対象外、未決、版が読み分けられる。 依頼者の確認 / 受け渡し記録は1.1.2
1.1.2 受け渡し記録 S11 / A02 指定先へ渡した版、送信記録、受領状況(確認済み又は未確認)を明記した記録がある。受領確認そのものはこのWPの完了条件ではない。 制作担当 / ファイル自体の検査は1.6.2
1.2.1 支給素材台帳 S08 / A03・A04 使用可の素材IDと対応する使用先が記録される。 依頼者の素材承認 / 新規素材の購入・許諾交渉は対象外
1.3.1 スライド編集原本 S02・S09 / A05・A06 12枚。承認済み原稿を反映し、指摘票の該当訂正を反映済み。 依頼者の内容確認 / 閲覧PDFは1.3.2
1.3.2 スライド閲覧PDF S03 / A07 編集原本の採用版から出力した12ページのPDF。 制作担当 / 原本修正の作業は1.3.1
1.4.1 ワークシート編集原本 S04・S09 / A08・A09 A4二ページ。合意した記入欄と指摘への訂正を反映済み。 依頼者の内容確認 / 解答例は未決S13
1.4.2 ワークシート印刷PDF S05 / A10 採用原本から出力したA4二ページのPDF。 制作担当 / 実印刷は対象外
1.5.1 進行メモ編集原本 S06・S07・S09 / A11・A12 二ページ。順序とスライド・ワークシートの参照先が一致し、該当訂正を反映済み。 依頼者の内容確認 / 当日進行は対象外
1.5.2 進行メモ閲覧PDF S07 / A13 採用原本と一致する二ページのPDF。 制作担当 / 読み上げ実演や講師成果の保証は対象外
1.6.1 指摘・対応台帳 S09 / A14 集約された指摘ごとに対象原本・対応場所・確認状態が追える。 制作担当 / 訂正を実行する工数は各原本のWPにのみ置く
1.6.2 納品検査記録 S10 / A15 六ファイルの形式・ページ数・版と対応先を照合した結果がある。 制作担当 / 原本の訂正そのものは各原本WP
1.6.3 納品ファイル一覧 S10 / A16 六ファイルの名称・用途・採用版を列記し、検査記録と一致する。 制作担当 / 送信・受領確認は1.1.2

入力・出力・採用版を区別する

スライド原本の辞書を読むときは、入力と出力を分けてください。承認済みの支給原稿と図は、制作に使う入力です。十二枚の編集原本は、出来上がる出力です。その原本が支給原稿に沿い、集約指摘の該当箇所を反映していることが完了の判断材料になります。入力資料が届いたことを、出力の完成へ読み替えないようにします。「原稿確認済み」という記録だけでは、スライドへ正しく反映したかはまだ分かりません。

PDFの辞書では、単に「PDFがある」では弱いことが分かります。必要なのは採用原本から出力したPDFです。前の版から出力した十二ページのPDFでも、形式とページ数だけなら条件を通ってしまいます。そこで版の対応を含めます。原本を訂正した後、PDFを出し直していない状態は、原本側は進んでもPDF側に未完了が残る状態として表せます。二つの箱に分けた効果は、このようなズレを一括完了にしない点にあります。

素材台帳の完了条件は、素材の名前を列挙するだけでは満たせません。使用可能な素材IDと、実際に置いた資料・箇所の対応が必要です。例えば支給図をスライドからワークシートへ移したなら、図そのものの使用可否が変わらなくても、使用先の記録は変わります。最初の受取時に台帳を作っただけで閉じず、最終版の使用先を照合する活動を後段に置く理由がここにあります。

素材の承認役は依頼者ですが、その欄に名前があることは承認済みの証拠ではありません。辞書は、誰の確認が必要かを定める文書です。実際の承認や確認があったことは、別の記録で確かめます。この区別を残すと、制作担当が入力した台帳を、依頼者が見たものとして誤表示しにくくなります。未確認のものは未確認として扱い、確認役の欄を埋めたことだけで作業を先へ進めないようにします。

記録の完成と受領確認を区別する

受け渡し記録は、特に完了の意味を丁寧に読む必要があります。この教材の原依頼が求めているのは受け渡しの記録です。指定先、送った版、送信記録、受領状況が書かれていれば、受領状況が「未確認」でも、その記録の箱は完成し得ます。だからといって相手が受け取ったと確認できたわけではありません。記録の完成と、記録されている出来事の状態を別々に表示します。

仮に、送ったファイルの版が書かれていなければどうでしょう。送信メールがあっても、どの版を送ったかを追えず、この辞書の完了条件を満たしません。逆に版と送信先を記録しても、送信した証拠がなければ、送付予定を書いただけかもしれません。項目を埋めることより、第三者がその記録から何を確かめられるかを考えます。この例で必要な証拠を、他案件へ無条件に同じ形で当てはめる必要はありません。

隣との境界と管理する粒度を決める

隣との境界は、作業を押し付け合うための欄ではありません。納品一覧にはファイル名、用途、採用版を書きますが、ファイル内部のページ数や版の照合結果は検査記録側へ置きます。一覧の行を作った担当者が、そのまま検査も実行する場合でも、何を終えた証拠なのかは分けます。担当が同じだから一つのチェックで済むとすると、一覧があることと中身を検査したことが混ざってしまいます。

指摘台帳と実際の訂正も、辞書の境界で分けておきます。台帳側は対象原本、対応場所、確認状態を追えることを求めます。原本側は該当訂正が反映されていることを求めます。同じ指摘番号を両方から参照することは重複ではありません。参照するために番号を共有するのと、同じ台帳整備の仕事を二度見積るのは違います。データのつながりを残しつつ、成果物の責任を一度ずつ置く考え方です。

どこまで細かくするかは、この例の管理目的から決めます。「納品全部」という一箱では、原本完成とPDF出し忘れを分けられません。一方、「ファイルを開く」「文字を一つ入力する」を個別の箱にすると、完成物より操作の記録が中心になります。今回必要なのは、形式の違い、横断記録、訂正の反映を別々に確認できる粒度です。一定の時間より短い箱を禁止する、といった数値規則から逆算していません。

辞書を使う小演習として、ワークシート原本と印刷PDFの二行だけを隠し、自分で完了条件を書いてみてください。答え合わせでは、二ページであることだけでなく、原本は合意した記入欄と訂正の反映、PDFは採用原本からの出力を含めたかを見ます。「印刷済み」や「解答例付き」を足していたら、対象外と未決が入り込んでいます。長い説明を書けたかではなく、約束を増やさず不足なく表せたかで点検します。

活動を取り出し、階層と順序を混ぜずに見積もる

基準19.5時間に親小計を重ねた25時間と39時間の誤集計を示す教材

二つの誤集計は基準版の例。数値は教材の仮定工数で、実測値や納期ではない。

完成物から活動と先行関係を取り出す

完成物の箱が決まったら、その箱を完成させる活動を別表へ取り出します。スライド編集原本という箱には、初稿を組む活動と合意内訂正を反映する活動が入ります。一つのワークパッケージと一つの活動を、無理に一対一へ合わせる必要はありません。以下は基準版の十七活動です。番号が飛んでいる箇所がありますが、番号順に実行する指示ではありません。後の変更版と比較できるよう識別子を保持しています。

基準版17活動。T06の前には依頼者の集約指摘票という外部条件も必要。
活動 所属WP すること 仮定工数h 先行活動
T01 1.1.1 依頼文と確認回答を整理 1 なし
T02 1.2.1 素材IDと使用可否を照合 1 T01
T03 1.3.1 スライド原本初稿を組む 4 T02
T04 1.4.1 ワークシート原本初稿を組む 3 T02
T05 1.5.1 進行メモ原本初稿を組む 2 T03・T04
T06 1.6.1 依頼者の集約指摘票を受け、対象と担当原本を整理 0.5 T05
T07 1.3.1 スライドの合意内訂正を反映 1 T06
T08 1.4.1 ワークシートの合意内訂正を反映 1 T06
T09 1.5.1 進行メモの参照と訂正を反映 1 T07・T08
T10 1.3.2 スライドPDFを出力 0.5 T07
T11 1.4.2 ワークシートPDFを出力 0.5 T08
T12 1.5.2 進行メモPDFを出力 0.5 T09
T13 1.2.1 最終版の素材使用先を照合 0.5 T09
T18 1.6.1 訂正済み原本と指摘を照合し、対応箇所・確認状態を横断台帳へ更新 0.5 T09
T14 1.6.2 六ファイルの版とページを点検 1.5 T10・T11・T12・T13・T18
T15 1.6.3 納品一覧を確定 0.5 T14
T16 1.1.2 受け渡しと受領状況を記録 0.5 T15

最初に見る先行関係は、進行メモ初稿です。メモには説明順と資料の参照先を書くため、スライド初稿とワークシート初稿の両方を前提にします。階層上の進行メモはワークシートの次に並んでいますが、それが順序の根拠ではありません。必要な入力が二つあることが根拠です。もし階層表の表示順を入れ替えても、参照先を確かめるための前提は変わりません。

集約指摘を整理する活動には、表の中だけでは完結しない前提があります。依頼者から一つにまとめた指摘票が届くことです。進行メモ初稿が終わっても、指摘票が届いていなければ整理する対象がありません。制作担当が使う仮定の作業時間に、返事が来るまでの期間を加えないようにします。ここでは回答日を仮定していないため、合計工数から納品日や最短工期を導きません。

台帳の初期整理と訂正後更新を分ける

台帳の活動が前後二つある点も確認してください。最初は届いた指摘を対象原本へ振り分ける整理です。後の更新は、訂正済み原本を見て対応場所と確認状態を記録する仕事です。どちらも同じ指摘・対応台帳の箱に属しますが、必要な入力が違います。後の更新を最初の整理へまとめて完了扱いにすると、まだ直していない箇所へ対応済みの記録を付けることになります。

基準版では、後の台帳更新は進行メモの訂正が終わってから、納品検査の前に置きます。これにより、三種類の原本の訂正を踏まえた横断記録を検査へ渡せます。最終素材使用先の照合も、初期の素材ID確認とは異なる活動です。こちらはどの支給図を使ってよいかではなく、最後にどこへ使われたかを見るため、原本が出来た後の確認になります。名前が同じ「確認」でも、前後の役割を入れ替えないようにします。

親小計は活動の集計表示。活動総計に親小計を重ねて足さない。全数値は演習の仮定。
親 基準版h 追加版h(第6章)
1.1 管理記録 1.5 1.75
1.2 素材・根拠記録 1.5 1.5
1.3 スライド一式 5.5 5.5
1.4 ワークシート一式 4.5 6.0
1.5 進行メモ一式 3.5 3.5
1.6 横断確認・納品資料 3.0 3.5
総計 19.5 21.75

小計の二重加算を避けて工数を検算する

工数の検算は、活動を所属する末端の箱へまとめ、その小計を親へ積み上げます。スライド一式なら、初稿四時間、訂正一時間、PDF出力〇・五時間で五・五時間です。管理記録には、範囲確認一時間と受け渡し記録〇・五時間が入ります。親の小計をすべて足した十九・五時間は、全活動を一度ずつ足した値と一致します。二通りで同じ範囲を集計しているのであって、二つの合計をさらに足すのではありません。

よくある誤りを二種類に分けて計算します。全活動の十九・五時間に、スライド一式の親小計五・五時間だけをもう一度足すと二十五時間になります。全六親の小計を全部重ねると、十九・五時間に同じ十九・五時間を足して三十九時間になります。どちらも親子の二重集計ですが、重ねた範囲が違います。間違った合計だけを覚えるのではなく、追加した行が独立の仕事か、小計表示かを確認してください。

依存関係と担当者の割当てを分ける

先行関係だけなら、素材確認後にスライド初稿とワークシート初稿を並べて始められる構造です。ただし、両方を同じ担当者が手を動かして作るなら、同じ時間帯に二つを進める予定をそのまま確定できません。成果物間の依存がないことと、担当者の作業可能枠があることは別です。本稿ではその区別を指摘するところまでにとどめ、人数を増やしたら何日縮むかという計算へ広げません。

作業を日付へ置く段階では、この活動表に外部確認と担当者の条件を加えて検討することになります。しかし階層表を先に作った意味は、日付変更があっても、何を完成させるかの範囲を追える点にあります。時間の空きを探す話と、成果物の抜けを探す話を一枚の表で一度に解こうとせず、今どちらを検討しているかを読み分けると、修正の理由も明確になります。

この工数は、少量の集約指摘を扱う架空教材の仮定です。同じ十二枚なら誰でも四時間で初稿ができる、という目安ではありません。原稿の状態、図の扱い、確認内容が変われば前提も変わります。今回使う目的は、実際の価格を決めることではなく、同じ仕事を一回だけ数えたか、追加の影響を隠していないかを検算することです。見積書の金額や条件を考える際は、別の記事で扱う範囲と分けて進めてください。

八つの崩れた例を、元の依頼と照合して直す

進行メモPDFの抜けと指摘台帳の二重所属を並べた架空の誤例

左は必要なPDFの欠落、右は同じ台帳の二重所属。異なる原因なので修正先も分ける。

重複・欠落・範囲の追加を診断する

ここでは完成した基準版の一部だけをわざと崩します。読者は、各症状について、最初に見る依頼または表、誤りの種類、戻す先を短く書いてください。「注意して確認する」だけでは修正箇所が決まりません。箱そのものを戻す場合、所属を直す場合、活動の先行関係を直す場合があるため、何が崩れたのかを先に区別します。次の問いの後に、原因ごとの解答を載せます。

八つの原因別問題。N05に関連して全親を重ねる別計算N05bも本文で検算する。
問題 崩した箇所 読者の回答欄
N01 A14を1.3.1にも所属させる 参照元/誤りの種類/戻す先を考える
N02 1.5.2を削除 参照元/誤りの種類/戻す先を考える
N03 印刷発送のWPを追加 参照元/誤りの種類/戻す先を考える
N04 S13を自動採用し解答例を追加 参照元/誤りの種類/戻す先を考える
N05 親1.3の見積を子とは別に足す 参照元/誤りの種類/戻す先を考える
N06 T03の前提をT05にする 参照元/誤りの種類/戻す先を考える
N07 T07に実績1時間を記録し自動完了にする 参照元/誤りの種類/戻す先を考える
N08 T03,T04を同一担当者に同時割当て 参照元/誤りの種類/戻す先を考える

一つ目は、指摘・対応台帳の確認項目をスライド原本にも所属させた例です。スライドの訂正を追いたい気持ちは分かりますが、同じ横断台帳整備を二つの箱へ持たせています。戻る先は指摘の原依頼と辞書の境界です。台帳は横断確認側へ一度だけ置き、スライド原本には実際の訂正反映を残します。スライド側から台帳を参照するリンクは残してよく、参照関係まで消す必要はありません。

この例を直すとき、スライド側の訂正活動まで削ってしまうと、別の抜けを作ります。削る対象は重複した台帳の責任であり、原本を直す責任ではありません。二つの作業の結果を、原本の変更箇所と台帳の対応欄として並べると違いが見えます。片方だけ残してすべて済んだことにするのではなく、それぞれが生む結果を一つずつ管理するのが修正です。

二つ目は進行メモ閲覧PDFの箱を消した例です。編集原本があるため、見た目には資料がそろっているように見えます。原依頼の両形式が必要という箇所へ戻ると、閲覧用の形式が欠けています。対応する確認項目は行き先を失っているので、箱とPDF出力の活動を戻し、納品検査の対象にも戻します。階層の一行を戻すだけで終わらず、その箱を完成させ、確かめる側までつなげ直します。

三つ目は印刷発送を追加した例です。ワークシートのPDFが印刷用だからという理由は、対象外の明示を覆しません。ここで見るのは工数の多寡ではなく、引き受けた範囲の根拠です。印刷発送の箱を基準版から外し、相談が必要なら別に残します。追加した仕事が便利そうでも、依頼された成果物の中へ無断で混ぜてよいことにはならない、という判断を練習する例です。

四つ目は、未決の解答例を最初から入れた例です。三つ目と似ていますが、こちらには将来欲しいという発言があります。だから対象外と同じラベルで消すのではなく、未決として保存するのが修正です。採用の判断に必要な内容がまだ決まっていないので、基準版の完成条件に含めません。後の章で追加承認を仮定した別版を作りますが、その結果を前の基準版へさかのぼって適用しないようにします。

集計と活動順序の誤りを直す

五つ目は、箱の範囲ではなく集計式が壊れた例です。活動も所属も正しく残っているのに、親のスライド一式を独立の追加行として合算しています。直すのはその行の扱いです。親を小計表示に戻せば二十五時間から十九・五時間へ戻ります。関連する全親重複の例では三十九時間から戻ります。台帳を二重に作る一つ目とは違い、実作業の箱を削除する修正ではない点を区別してください。

六つ目は、スライド初稿の前提を進行メモ初稿に変更した例です。メモはスライドとワークシートを参照するのでスライド初稿を待ちます。それなのにスライド初稿もメモを待つと、互いに相手が終わるまで始められません。矢印をたどると同じ活動へ戻る輪ができます。これは成果物の親子関係の問題ではなく、活動依存の循環です。元の入力条件へ戻し、スライド初稿の前提を素材確認とする関係を復元します。

完了の証拠と担当者の無理を点検する

七つ目は、スライド訂正に一時間を記録したら自動的に完了にした例です。予定どおり時間を使ったという事実から、訂正が反映されたとは言えません。該当指摘が原本のどこへ反映され、その状態を確認できるかを調べます。時間は実績として残し、完成の判定とは別に扱います。逆に短時間で済んだから未完了とも限りません。予定との差ではなく、辞書の条件を満たす証拠を見ることが修正になります。

八つ目は、スライド初稿とワークシート初稿を同じ担当者へ同時に割り当てた例です。依存関係に輪はなくても、人の割当てには無理が残り得ます。二つの成果物を一つに統合してごまかすのではなく、担当者の作業可能枠を確認する段階へ戻します。ここでは具体的な勤務時間や別担当者を仮定していないので、どちらを何時に動かすかまでは決めません。未確定の予定を、計算済みの最短日程として示さないためです。

答え合わせの後は、誤りを「範囲」「所属」「集計」「活動の順序」「完了の証拠」「担当者の割当て」に分けてみてください。同じ赤字修正でも、直す表が違うことが分かります。例えばPDFの抜けを集計式だけで直そうとすると、合計が合っても必要な成果物は戻りません。原因と修正先を対応させる練習にすると、八つの注意事項を暗記するより、自分の計画で何を調べるかを選びやすくなります。

訂正・追加・対象外を分け、変更後の構造を保つ

主要六ファイル19.5時間の基準版と、解答例PDF追加後の主要七ファイル21.75時間を比較する教材

追加承認があったと仮定した別版。元の基準版は保持し、主要成果物と管理記録の変更を追う。

合意内の訂正と承認前の追加を分ける

最後に、制作中に届いた三つの話を扱います。一つは支給原稿と違う誤字の訂正、もう一つは解答例PDF一ページの追加、最後は当日の司会です。いずれも何かを変える話ですが、同じ「修正」の箱へ入れると範囲の違いが見えなくなります。まず基準版を保存したまま、既にある成果物の訂正か、新しい成果物か、対象外の相談かを分けます。

訂正・追加・対象外を同じ修正扱いにしない。
相談 内容 扱い
C01 スライドの支給原稿どおりでない誤字を一か所直す 合意範囲内の訂正
C02 解答例PDF一ページを追加 この演習では依頼者が追加を明示承認した場合の別版
C03 当日の司会もしてほしい 対象外。演習では採用しない

誤字の訂正は、スライド編集原本の合意内訂正として扱います。ただし、原本の一文字を直すだけで周辺がすべて自動更新されるわけではありません。PDFの再出力、対応台帳の更新、版の検査、一覧の整合へ影響します。新しい成果物を増やさないことと、追加の作業が一切ないことは同じではありません。既存のどの箱へ影響したかをたどり、終わったことにしていた確認を必要に応じて見直します。

解答例については、承認前の状態を先に残します。最初の発言は未決であり、内容も決まっていません。ここから勝手に一ページを制作して納品予定へ入れないようにします。以下では、教材内で追加が明示承認されたと仮定し、新しい依頼を加えた別版を作ります。現実の依頼者から承認を得たという話ではありません。基準版と追加版を並べることで、承認後に何を更新すべきかを練習します。

変更の差分。基準版の原文や数値を追加版で上書きしない。
項目 基準版 追加承認を仮定した別版
原依頼 S01〜S13を保持 元の13原依頼を保持しS14を追加
S14 なし 解答例PDF一ページの追加を仮定。作成用原本の外部納品は含めない
確認項目 16 17(A17を追加)
WP 12 13(1.4.3 解答例PDFを追加)
主要成果物ファイル 6 7
活動 17 19(T19範囲改訂・T17解答例を追加)
仮定工数 19.5h 21.75h
未決S13 原文のまま未決 原文保持、解決参照をS14と1.4.3へ
範囲・検査・一覧 基準の対応 A01・A15・A16と対応辞書へS14参照を追加
追加版の全19活動。T19→T17→T13の関係とT18の保持を確認。T17には依頼者の内容確認が別途必要。
活動 所属WP 変更後の内容・工数 先行活動
T01 1.1.1 依頼文と確認回答を整理 / 1h なし
T19 1.1.1 教材内S14追加承認を仮定した範囲改訂記録を作り、S13とS10から変更後辞書へ参照を付ける / 0.25h T01
T02 1.2.1 素材IDと使用可否を照合 / 1h T01
T03 1.3.1 スライド原本初稿を組む / 4h T02
T04 1.4.1 ワークシート原本初稿を組む / 3h T02
T05 1.5.1 進行メモ原本初稿を組む / 2h T03・T04
T06 1.6.1 依頼者の集約指摘票を受け、対象と担当原本を整理 / 0.5h T05
T07 1.3.1 スライドの合意内訂正を反映 / 1h T06
T08 1.4.1 ワークシートの合意内訂正を反映 / 1h T06
T09 1.5.1 進行メモの参照と訂正を反映 / 1h T07・T08
T10 1.3.2 スライドPDFを出力 / 0.5h T07
T11 1.4.2 ワークシートPDFを出力 / 0.5h T08
T12 1.5.2 進行メモPDFを出力 / 0.5h T09
T17 1.4.3 解答例を作成し依頼者確認後PDF出力 / 1.5h T09・T19
T18 1.6.1 訂正済み原本と指摘を照合し、対応箇所・確認状態を横断台帳へ更新 / 0.5h T09
T13 1.2.1 追加解答例を含む七主要成果物の最終素材使用先を照合 / 0.5h T09・T17
T14 1.6.2 七ファイルの版とページを点検 / 1.75h T10・T11・T12・T13・T17・T18
T15 1.6.3 納品一覧を確定 / 0.75h T14
T16 1.1.2 受け渡しと受領状況を記録 / 0.5h T15

追加成果物と変更前の記録を対応させる

新しい箱はワークシート一式の下の解答例PDFです。作成用原本は内部で使いますが、その編集原本を外部へ渡す範囲は含めません。基準版の三種類の資料がすべて原本とPDFの組だからといって、追加も自動的に二ファイルにしないようにします。新しい依頼に沿って一ページのPDFを一つ加えるため、主要成果物ファイルは六から七へ変わります。補助記録を含む全送付数を七と断定するものではありません。

元の「六つのファイル」という依頼文や、解答例が未決だった発言は書き換えません。代わりに、追加承認を仮定した新しい依頼から、現行辞書の七主要成果物と解答例の箱へ参照を付けます。過去の原文が六、現行の一覧が七という違いには、変更の根拠が必要です。原文だけ七へ直してしまうと、いつ何が追加されたのかを追えなくなり、基準版との比較もできなくなります。

増分工数と活動の変更を検算する

工数の増分には、解答例そのものの制作だけでなく、範囲改訂記録、検査、一覧の改訂を含めます。範囲改訂〇・二五時間、新成果物の作成と確認・出力一・五時間、検査〇・二五時間、一覧〇・二五時間で、合計二・二五時間の増分です。基準の十九・五時間に加えると二十一・七五時間になります。管理記録の変更を無時間扱いにせず、どの箱に増えたかを表で追えるようにします。

追加版の活動では、範囲改訂記録を作ってから解答例の作成へ進みます。さらに、この教材では使用許可済みの支給図を解答例にも再利用すると仮定しています。そのため最終素材使用先の照合は、解答例が出来た後で行います。図の使用許可を取り直すという設定ではなく、増えた使用先を台帳へ反映するための順序です。新しいPDFを足すだけで、既存の素材照合を前のまま完了扱いにしない点が重要です。

追加後も横断台帳の訂正後更新は残ります。新しい作業を入れたからといって、既存の確認を削って合計を元の値へ近づけません。また、解答例の内容には依頼者確認が必要ですが、その返答待ちを制作工数へ混ぜません。活動数は基準の十七から十九へ増え、親の小計も変わります。どこが増えたかと、どこは元のままかを分けて見ると、単に総計の数字を上書きするより検算しやすくなります。

対象外と未完了を残して応用する

当日の司会は、この演習では採用しません。進行メモの原本があるから、その担当者が登壇する範囲まで含むとは読めないためです。メモを作る成果物と当日の役割を分け、別の相談として残します。対象外の内容を既存の箱へ押し込まなければ、資料制作の完了条件は保てます。追加の相談が届いたという事実だけで、基準版の納品物を未完了へ変える必要もありません。

完了判定の三例。三例目は記録WPのみ完了、受領確認済みではない。
WP 実績hという設定 確認できる証拠 判定
1.3.1 5 初稿あり、指摘の反映証拠なし 未完了
1.3.2 0.5 旧版原本からのPDFのみ 未完了
1.1.2 0.5 指定先・送信版・送信記録と「受領未確認」を明記した記録がある 記録WPは完了。受領確認済みとは扱わない。

最後の三例では、実績時間、成果物の状態、記録の状態を別々に判断します。初稿はあっても指摘反映の証拠がない原本は未完了です。旧版原本からのPDFだけがある場合も、採用原本との一致を満たさず未完了です。一方、必要な送信情報と「受領未確認」を記録した受け渡し記録は、その記録の箱としては完了です。ただし受領確認済みとは表示せず、この一つの記録だけで他の箱や案件全体の完了を判定しません。

自分の資料一式へ応用するときは、まず原文を保存し、主要ファイルと管理記録を分けて拾い、一つの確認項目に一つの所属先を決めてください。次に、各箱で何を見れば完成と言えるかを書き、活動を取り出して一度ずつ見積ります。追加が来たら元の版を残し、根拠、増えた箱、変わった辞書、順序への影響を別版で比較します。きれいな図を作ることより、相手の依頼と自分の完成判定を行き来できる計画にすることが、この演習の到達点です。

依頼範囲そのものを整理する段階は、要件定義の書き方も参照してください。範囲を価格や条件へつなぐ段階は、フリーランスの見積書の書き方で扱っています。本稿の工数をそのまま請求額へ置き換えるのではなく、用途に合わせて読み分けてください。

考え方の参考:PMIの2008年のWBSとプロジェクト計画に関する講演論文、2006年のWBS標準に関する講演論文。成果物中心の階層、親と子の範囲の整合、内部・管理成果物、活動・予定との区別を参考にした独自教材です。現行標準の全版に一致することや、実際の納期・改善効果を保証するものではありません。根拠確認日:2026年10月16日。